発達障害が強み ニトリ会長の「お、ねだん以上。」な話

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聞き手・鈴木彩子
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 「お、ねだん以上。」で知られるニトリホールディングス会長の似鳥昭雄さん(77)は、小学4年生になっても自分の名前を漢字で書けなかったという。営業も接客も整理整頓も全部苦手。それでも、一代で売上高7千億円の企業を築き上げた。実は3年ほど前、発達障害だということが分かったという。苦手を抱えながら、なぜ成功できたのか。

 ――東証1部上場企業の会長が、発達障害だとは知りませんでした。

 注意力が散漫なんです。今でもそうですけどね。人の言っていることをずっと聞けないんですよ。違うことを考えちゃうとかね。

 整理整頓もできなくて、机の上は書類だらけ。家は脱いだ服やら、何やらかにやらがそのへんにボンボン投げてあります。なくし物も多くて、身につけるありとあらゆる物をなくします。財布、カード、傘……。子どもを忘れてきたこともあったしね。

カバンを紛失、財布も忘れて…

 ――カバンに全部詰め込んで持ち歩いたりはしないのですか。

 カバンもいくつか持ったんだけどね、カバンそのものを忘れてきちゃうので、どうしようもなくて。

 だからもう、ポケットに入れるしかないんです。指定位置を決めていて、胸ポケットには名刺入れとメモパッド、ズボンの右ポケットは血糖値の測定器、左ポケットは常備薬、後ろの左右のポケットにはそれぞれ財布とスマホ。財布は、ほら(びよ~んと伸びるひもでズボンにくくりつけている)。これでも忘れてしまって、引きずって歩いていることもあります。

 ――スケジュール管理はどうされているのですか。

 最近はこれです(A3用紙の両面に、6カ月先までの予定をびっしりと書き込んだものを、六つ折りにして背広の胸ポケットへ)。秘書が毎週、更新してくれる。アイデアは、スマホに音声で吹き込んでおく。何を入れたか、忘れちゃうんですけどね。

 ――発達障害だとわかったきっかけは?

 3年ぐらい前なんですよ。テレビを見ていたら、発達障害の特徴や種類を紹介していて、ああ、そっくりだなと思ったんです。それで、専門の医師に診てもらって、自分でも本や文献を調べて、私は正真正銘の発達障害、ADHD(注意欠如・多動症)なんだということがわかってね。

 記事の後半では、先生の話を1分も聞けずにいじめられた子ども時代や、仕事を転々としたサラリーマン時代を経て、人生観が変わったあるきっかけについて語っています。

 ――ショックを受けませんで…

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この記事を書いた人
鈴木彩子
くらし報道部
専門・関心分野
医療・健康、脳とこころ、アレルギー
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    小室淑恵
    (株式会社ワーク・ライフバランス社長)
    2021年7月6日18時21分 投稿
    【視点】

    日本では、発達障害の子どもは別教室でサポートが受けられるというケアが一般的だ。これでも、以前より教育現場における対応力はあがったので、評価したい。でも、世界におけるインクルーシブ教育は、周囲こそが各自の強みに目を向けて接することで、同じ空間

    …続きを読む
  • commentatorHeader
    宮坂麻子
    (朝日新聞編集委員=教育、子ども)
    2021年7月6日11時40分 投稿
    【視点】

     じっと席に座っていられない、忘れ物が多い、勉強が嫌い、友達と話が合わない、こだわりがある……。学校になじめず、自分を否定し、自信をなくしている小中高校生が自分らしく、自由に楽しく学ぶプログラム「LEARN with NITORI」の実施が

    …続きを読む