「ニュース女子」制作会社に賠償命令 基地反対めぐり名誉毀損認定

村上友里
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 沖縄の米軍基地反対運動を取り上げたテレビ番組「ニュース女子」で名誉を傷つけられたとして、人権団体「のりこえねっと」共同代表・辛淑玉(シンスゴ)さんが、番組を制作したDHCテレビジョン(東京)などに1100万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が1日、東京地裁(大嶋洋志裁判長)であった。判決はDHC側による名誉毀損(きそん)を認め、550万円の支払いとウェブサイトへの謝罪文の掲載を命じた。

 番組の司会を務めた東京新聞元論説副主幹の長谷川幸洋さんに対する賠償請求は「番組の企画、制作に一切関与していない」として棄却した。

 判決は、東京メトロポリタンテレビジョン(MX)で2017年に放送された2番組について、「暴力や犯罪行為もいとわない者らによる反対運動を、辛さんが経済的に支援をし、あおっている」という内容だったと認定した。

 そのうえで辛さんの団体が飛行機代5万円を支給して沖縄に「市民特派員」を派遣していたのは「あくまで反対運動の現状を発信してもらうのが主目的で、運動をあおる目的とは認めがたい」と指摘。番組内容は真実ではないと判断した。

 辛さんは道路に座り込んで工事車両の通行を妨害する運動を呼びかけていたが、番組では参加者を「テロリスト」「襲撃される」などと表現しており、判決は「殊更に危険性の高い暴力が加えられる可能性を強調し、視聴者に印象づけた」とも指摘した。

 さらにDHC側は辛さんらへの裏付け取材もしておらず、真実と信じた相当な理由もないと結論づけた。

 一方、長谷川さんは、司会者として参加しただけで差別的な発言をしていないのに事実無根の個人攻撃をされたとして、2200万円の賠償を求めて辛さんを反対に訴えていた。この日はこの判決も同時にあり、「辛さんは番組で重大な損害を被っており、許容される範囲内の表現行為だ」として長谷川さんの請求を退けた。

 辛さんは判決後の会見で「番組はフェイクで沖縄の人たちを愚弄(ぐろう)し続けた。問題性を明確に示した画期的な判決だ」と話した。DHC側は「不当判決」として控訴する意向を示した。

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この記事を書いた人
村上友里
国際報道部
専門・関心分野
難民移民、人権、司法