「見くびられるわけにはいかない」公取委vsグーグル、水面下の攻防
公正取引委員会が米グーグルに独占禁止法違反で初の排除措置命令を出す方針を固めた。1年2カ月に及ぶ審査では、公取委とグーグルの間で水面下の攻防があった。
2023年10月、東京・霞が関の公取委事務総局。
「有力な事業者が市場支配力を固定化する仕組みを作ると、イノベーションが起こりづらくなり、消費者にとっても不利益となりうる」。審査開始時に記者会見した田辺治・公取委審査局長(当時)は言った。デジタルプラットフォーム事業者の影響は多面的で広範囲に及ぶ。審査開始を公表し、情報や意見を広く収集する宣言だった。
公取委は近年、同事業者に絡む審査については初期段階で概要を公表し、情報提供を募る方針を取る。今回はその方針が初めて適用されたケースだった。
「確約」打診したグーグル
公取委はスマホメーカー側やグーグル側への聴取などを進めた。関係者によると、グーグル側が公取委と協調して競争環境の回復を図る「確約手続き」を水面下で打診したのは、審査開始から1年1カ月が経った先月頃だった。
確約手続きは、独禁法違反で調査を受けている事業者が、自主改善策を盛り込んだ「確約計画」を公取委に提出し、調査を終えてもらう制度だ。違反が認定されないため、企業側にとっては株主からの損害賠償請求のリスクを減らし、自社イメージへの影響も最小限に抑えることができる。
公取委にとっても、競争環境を素早く回復させ、違反認定にかかる時間を削り、別事件への対応に人員を割くことができる。企業側から訴訟を起こされるリスクも減らせる。企業と公取委、双方にメリットがある確約手続きは、18年の導入から積極的に適用された。
だが、今回は公取委が受け入れなかった。すでに審査開始から1年以上が経過し、競争環境の「早期の是正」という確約手続きの趣旨からすると、「提案が遅すぎる」との受け止めが公取委側には強かった。
ヤフーの広告制限が調査対象となった今年4月のグーグルへの初の行政処分では、確約手続きが適用された。この時は審査の途中段階でグーグル側から提案があったが、今回は、公取委がすでに違反が認定できるとの判断を固めつつあった。グーグル側による提案内容も、公取委からは不十分なものに映り、確約手続きに応じるメリットは乏しかった。
公取委には命令にこだわる理由がまだあった。
「見くびられては」「手遅れになる」 公取委の意向
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