渡辺明名人(38)=棋王と合わせ二冠=に斎藤慎太郎八段(29)が挑戦している第80期将棋名人戦七番勝負(朝日新聞社、毎日新聞社主催、大和証券グループ協賛)の第5局が29日午前、岡山県倉敷市の「倉敷市芸文館」で前日から指し継がれ、対局2日目が始まった。第5局の地元主催は倉敷市・倉敷市文化振興財団。
朝日新聞デジタルのタイムラインでは北野新太記者の速報を中心に、両雄に肉薄する対局写真、村山慈明七段をゲストに招いての「囲碁将棋TV」中継、両対局者の秘話の紹介などで多角的に詳報します。
渡辺名人の3勝1敗で迎える第5局。名人は勝利すると防衛と3連覇を決める一局になる。もう後がない斎藤挑戦者は逆転奪取につなぐための1勝を目指す。
大山康晴十五世名人の出身地である倉敷市での名人戦開催は2019年以来、3年ぶり6度目。立会人は26日に永世名人襲位が発表された谷川浩司十七世名人(60)が務める。持ち時間各9時間の2日制。1日目の消費時間は渡辺名人が3時間13分、斎藤挑戦者が4時間54分。1日目は48手目を挑戦者が封じた。
将棋担当・北野新太の目
永瀬王座が語る「野球の勝負勘」 渡辺名人は佐々木朗希の直球も例に話した
開幕から決着まで、常に「名人の序盤」が語られるシリーズだった。
第5局の後、勝者が勝因として、敗者が敗因として挙げたように、渡辺明名人の序盤戦略は斎藤慎太郎挑戦者を全5局を通して上回っていた。
1日目から圧倒した第1~3局。第4~5局も局後の検討で名人が序盤でわずかにリードを奪っていたことが分かっている。
なぜそんなことが可能なのか。現代将棋では棋士の誰もがAI研究を採り入れ、序盤に磨きを掛けている。過去2期の順位戦A級で通算16勝2敗という圧倒的な成績を残して2期連続で名人戦の舞台に上がった斎藤挑戦者とて同じことだ。最先端、最新流行形の研究を微に入り細に入り、日夜続けている。
そのような潮流の中、なぜ渡辺名人の研究は屹立(きつりつ)するのか。
誰よりも尋ねてみたかった棋士がいる。永瀬拓矢王座(29)である。
永瀬は2018年の棋王戦五番勝負、21年の王将戦七番勝負、そして今年2、3月の棋王戦五番勝負で渡辺に3度挑戦し、全て退けられている。5月の棋聖戦挑戦者決定戦は永瀬が制したが、通算の対戦成績では7勝19敗と大きく負け越している。
藤井聡太竜王を含めて現在3人しかいないタイトルホルダーの一人であり、直近で「名人の序盤」を体感している男に尋ねたかった。
名人戦七番勝負第4局の後に行ったインタビューの途中、聞いた。今期の七番勝負をどう見ているのか、名人の序盤が際立っているように思えるが、と。
目を大きく見開いた永瀬は、なぜか楽しそうな笑顔を浮かべて言った。
「名人芸というものは何か…
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