ロシアの消耗戦はなぜ? 圧倒的な航空戦力、その裏にある事情とは

有料記事ウクライナ侵略の深層

聞き手・牧野愛博
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 ウクライナ東部での同国軍とロシア軍の戦闘について、米軍制服組トップが6月中旬に「ほとんど第1次世界大戦のような厳しい消耗戦だ」と指摘しました。なぜ、圧倒的な航空戦力を誇るロシアが、このような戦い方をしているのでしょうか。航空幕僚監部防衛部長などを務めた平田英俊元空将は、その背景にある航空優勢をめぐる考え方などについて指摘します。

 ――ウクライナ東部での戦いをどうみていますか。

 ロシア軍はセベロドネツクなどで無差別な砲撃を行い、街を破壊しています。ウクライナにある工場や交通などのインフラを使う気がないのでしょう。そうであれば、なぜ侵攻当初に、徹底的な空爆を実施しなかったのかは不思議です。

 米軍はイラク戦争やNATO(北大西洋条約機構)軍としてのコソボ空爆でもそうでしたが、最初に航空優勢を確保し、徹底的な空爆を行った後で地上戦に移ります。早期に目的を達成し味方の被害を最小限に抑えるためです。

 アフガニスタンではテロ集団のようなイスラム武装勢力タリバンが相手だったため空爆の効果があまり出ませんでした。ただ、ロシアのウクライナ侵攻は正規軍同士の戦いであり、まず、航空優勢を確保し空爆を行えば効果的な戦いができたはずだと思います。

ロシア軍の考えは・・・・・・

 ――専門家の間では、ロシア軍に航空優勢を確保する能力がなかったと指摘する声が出ています。

 効果的に航空優勢を確保するため、近代的な航空戦力の整備にはお金がかかります。相手の防空網や航空戦力を潰すために、情報収集能力、電子戦能力、ステルス性など高い性能の戦闘機や爆撃機などが必要になります。ロシアにはそういった分野に十分投資するだけのお金がなかったのかもしれません。

 ただ、ロシア軍には、航空優勢を確保した後に地上軍が侵攻するという考え方が、そもそもなかった可能性があります。航空戦力は地上軍の作戦を直接的に支援、援護するという考え方が強かったのかもしれません。

 ――どうして、そう思われるのですか。

 旧ソ連と日米では軍の運用や装備システムについての考え方に大きな違いがあることを知る経験をしたからです。

 ソ連は崩壊後、外国に武器の売却を始めました。航空自衛隊では調査研究のため旧ソ連製の戦闘機スホイ27を購入する話が持ち上がりました。私は旧東ドイツの空軍基地とモスクワを訪れて調査しました。旧東ドイツで、旧ソ連製戦闘機ミグ29を運用している空軍基地を訪れ、機体を視察し、維持運用について様々な話を聞きました。

 こんな話がありました。エン…

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この記事を書いた人
牧野愛博
専門記者|外交担当
専門・関心分野
外交、安全保障、朝鮮半島
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