チャはずっと眠っているようだった 命の重み、考え続けた動物園
「チャ」は眠るように旅立った。闘病の苦しみをどう和らげるか。動物との関わりを考える出来事に直面した、ある地方の動物園の話――。
松山市中心部から南へ約10キロにある愛媛県立とべ動物園(愛媛県砥部町)。コリデール種の雄羊であるチャはここで暮らしてきた。
飼育員が飼育スペースに入っていくと体をすり寄せてくる人なつっこい性格。体を触ってもらうのが大好きだった。全身に白い毛をまとい、5月になると毛刈りをされた。かつては子どもたちともふれあった。
体を触ってもらうのが大好き
2年前の5月ごろ、歩く際にふらつくようになった。当時すでに10歳を超えていた。羊の寿命は10~12歳。チャは高齢だった。
自力でまっすぐ歩くことができなくなった。でも食欲はあり、ふらつきながらも歩いたり昼寝をしたり、日常は変わらなかった。
今年の2月ごろからは、干し草やニンジンなどのえさをはき出すようになった。でも、飼育員が細かく切って与えると、まだえさをねだる元気を見せた。
春ごろから、ほかの5頭と隔離された。4月15日、とうとう立てなくなった。
春、とうとう立てなくなった
えさを口元に持っていっても食べない。食べやすいように、飼育員がすり下ろしたリンゴやニンジンをスプーンで口に運んだ。チャは眠っていることが多くなった。
立てなくなって2週間ほど。困ったことが起きた。人でいう、床ずれだ。
毛が抜け、むきだしになった皮膚が巨大なかさぶたのように赤黒くなった。
チャは左半身を下にして寝ることが多かった。地面にふれる肩や腰にも床ずれが広がった。そこで飼育員は、傷のない右半身が下になるようチャを動かした。しかし呼吸が荒くなり、苦しがったので元に戻した。
チャをどうするか。
動物園の関係者の脳裏に、ある3文字が浮かぶようになった。
安楽死。とべ動物園では、結…
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