「天才だな」同世代の背中追ってたどり着いた境地 将棋棋士・松尾歩
将棋の松尾歩八段(42)が19日、第81期将棋名人戦・B級2組順位戦(朝日新聞社、毎日新聞社主催)の5回戦に臨んだ。低音ボイスの持ち主であることから「セクシー」の異名も持つ人気棋士。B級1組に連続13期在籍した実力者は、修業時代に背中を追い続けたある棋士のことをこう評する。「天才だなあ、と思うんです」
「鬼のすみか」
名人を頂点とする順位戦の中でも、五つのクラスのうち上から二つ目のB級1組は長年そう呼ばれてきた。元A級の実力者や若手有望株らが総当たりで戦うこのクラスは対局数が12局と最も多く、将棋の実力だけでなく体力や精神力も肝要となる。
松尾歩は、前期の第80期順位戦まで、このクラスに連続13期在籍した。
「タイトル保持者と戦うことも多いクラス。そうした方たちとギリギリの勝負をしてきたことが、一つの自信というか心の支えになっている部分はあります」
棋士の数が増え、全体の層が厚くなった近年は、このクラスを維持することの重みが以前より増したように感じられる。「トップ棋士」という表現は、今やA級だけでなくB級1組の棋士も含めるのが妥当であろう。ある棋士が「今のB級1組は『A級2組』」と表現していたことを思い出す。
松尾は順位戦だけでなく、他棋戦においても同世代を牽引(けんいん)する活躍を続けてきた。21歳で新人王戦に優勝し、37歳の時には竜王戦で挑戦権獲得まであと1勝に迫った。今年もNHK杯テレビ将棋トーナメントで準優勝し、存在感を示している。
そんな松尾が「ずっと背中を追い続けてきた」と語る棋士がいる。1学年下の山崎隆之だ。
同世代の中でも目覚ましい活躍を続けてきた松尾歩八段が山崎隆之八段に抱く思いとは。記事の後半では、松尾八段が「あの災害」が起きた日の順位戦についても語ります。
「自分は中2の時、研修会か…
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- 【視点】
取材した村瀬信也記者に、話を聞いてみました。「事前にこういう記事になるとは思っていなかった」そうです。 山崎隆之八段とは同世代ではありつつ、松尾歩八段が「あまり直接話す機会はなかった」と言う通り、接点は対局ぐらいなのだと思います。「取
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