介護保険2割負担拡大は「安心を掘り崩す」 樋口恵子さんら反対訴え

畑山敦子
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 3年に一度の介護保険制度の見直しの議論で、負担増やサービスの見直しなどが論点に上がっていることに対して、社会学者の上野千鶴子さんや、「高齢社会をよくする女性の会」理事長の樋口恵子さん、介護事業者の有志らが18日、東京の国会議員会館で集会を開き、「きわめて強い危機感をもつ」などと反対を訴えた。

 今回の見直しでは、介護サービスを利用した場合の自己負担を、現状の原則1割から原則2割とするか、例外的に2割以上の負担となる所得の基準を引き下げるなど、負担増が議論されている。「要介護」認定の5段階のうち、1と2の人に対するサービスの一部を保険給付の対象から外して市町村の事業とすることや、ケアマネジャーによるケアプラン作成を有料とすることなども論点だ。

 この日の集会で、国際医療福祉大大学院教授の大熊由紀子さんは「介護保険が改悪されようとしている」と指摘。介護保険の創設にもかかわった樋口さんは、介護保険を「持続・発展させて次の世代に譲り渡すことが今の高齢者の責務の一つではないかと考え、はせ参じた」と話し、「老後の安心を掘り崩す改正案をこのまま成立させてはいけません」などと抗議声明を読み上げた。

 続いて開かれた記者会見で、上野さんは「1割を2割にあげるのは恐ろしいこと。重度者限定や利用者負担の2割など、これまでの改定で小出しにしてきたものの行き着く果てが見えてきた」と言及。介護事業を運営するNPO法人「暮らしネット・えん」(埼玉県新座市)の小島美里さんは、一部サービスの保険外しについて「介護保険制度の破壊です」と批判した。

 介護保険制度は2000年4月に始まった。介護度が軽い「要支援」を含めて要介護認定を受けた人は約684万人(21年4月時点)で、20年ほどの間で約3倍になっている。21年度にかかった介護費用は、公費と利用者負担を合わせて11兆円を超えた。

 このため、サービス給付が増えるのを抑え、利用者の負担を増やす方向の見直しが続いている。15年以降、一定以上の所得がある人の自己負担が2割または3割となり、要支援1、2の人に対する一部のサービスが市町村の事業に移行している。

 今回の見直しでさらなる負担増などが浮上していることを受け、危機感をもった介護事業者などが9月に「史上最悪の介護保険改定を許さない!会」を結成。オンラインで4回集会を開き、問題点を議論してきたという。

 厚生労働省は、年末にも見直しの方向性を示す方針で議論を進めている。

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この記事を書いた人
畑山敦子
デジタル企画報道部|言論サイトRe:Ron
専門・関心分野
人権、ジェンダー、クィア、ケア