第11回「子どもと向きあう保育」はぜいたくですか 保育士たちの思いと現実

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 「子どもたちにもう1人保育士を!」。愛知県では、保育士や保護者たちが実行委員会をつくり、保育士の配置基準の改善などを求める活動を続けてきました。

 最近、保育士の労働環境の過酷さにも関心が高まっていますが、本当に知ってもらいたいのは保育現場の窮状だけではないといいます。呼びかけ人の一人で、社会福祉法人熱田福祉会の理事長を務める平松知子さんに聞きました。

 ――実行委員会では「崖っぷち保育」と題した4コマ漫画で、保育現場の窮状を訴えています。

 現役の保育士でもあるメンバーが、自身の経験を踏まえ、今の低すぎる保育士配置基準が現場にもたらす影響を描いてくれました。

 現状では、いくら子どもたちと丁寧に関わりたいと思っても、「待っててね」「今度ね」と言わざるを得ない場面がある。それどころか、お散歩先の公園で子どもを一瞬でも見失ってしまって、心臓がきゅーっと縮むような経験を、どの保育士も持っているわけです。何事もなくて「あぁ、よかった」が、いつまでも続くわけがない。

 そういう危機感を持って始めた運動ですが、私たちは何も崖っぷちの状況だけを知ってほしいんじゃないんです。

 子ども時代から、しっかりと人権を尊重される保育。それこそが私たちが目指しているものなのだということを、知ってもらいたいのです。

子どもの気持ちをくむ保育のためには

 ――例えばどんな保育でしょう。

 幼稚園の園長経験者の方とお話ししていて、印象に残ったことがあります。

 幼稚園ではお昼ご飯にお弁当を持って行く園も多いのですが、入園してすぐの3歳の子どもたちにとって、お弁当ってとても特別感のあるもの。わくわくして、登園してすぐに食べたくなっちゃう子もいるんです。

 そんなとき、どう対応するのか。

 その園では、そんな子どもの…

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この記事を書いた人
伊藤舞虹
名古屋報道センター|労働福祉・SDGs担当
専門・関心分野
子どもの福祉、社会保障、ジェンダー

連載崖っぷちの保育 ~子どもの安全を守るには~(全13回)

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