第1回もしかして虐待? 保育園で気になったとき、親や保育士にできること
保育園児を虐待したとして暴行容疑で元保育士3人が逮捕されるなど、不適切な保育が相次いで明らかになっています。ふだん、保育園や幼稚園に通う子どもの様子が気になったり、対応に不安を感じたりしたとき、親はどうすればいいのでしょうか。また、保育園や幼稚園で働く人が不適切な保育を目にした時、どのような行動がとれるのでしょうか。
「あれ?」と思ったら
さいたま市の阿部一美さんは2011年2月、保育園に通っていた長女の美月ちゃん(当時1)を亡くした。
相次ぐ不適切保育を受け、「過去にも保育園の虐待は何度も報道されてきたのに、それを行政が本当に重く受け止めて対応してきたかどうか、疑問だ」と話す。
美月ちゃんを亡くした後、通っていた認可外保育施設の保育士に夫と2人で聞き取りした際には、昼寝中、うつぶせ寝のまま、頭の上に毛布などをかぶせられて押さえるように寝かされていたと聞いた。
事故の数カ月前、顔にあざを作って帰ってきたことがあった。保育士から説明はなかった。美月ちゃんも1歳で、自分で何があったか説明することはできなかった。
事故の後、保育士に聞いたところでは、昼食を思うように食べず、無理やり顔を押さえつけて食べさせていた時にできたあざだった。
「あの時、もうちょっと話をしていたら」と何度思ったかわからない。
「『あれ?』と思うことがあっても、保育園に言いづらい気持ちはすごくわかる。でも、そこから一つ踏み込んで訴えないと、子どもは守れない」と強く思う。
保護者には、まず園に事実確認をし、内々におさめようとしていたり、納得できなかったりすることがあれば、市区町村に連絡してほしいと願う。園の保護者会や、周囲の保護者に話して共有しておくことも大事だという。
ただ、親は日中の保育を見ることができない。見ているのは保育士だけだ。
「保育園の先生は、保育の場面で虐待につながるような兆候や、疑問に思うことがあったら、良心を持って、園長や自治体に報告してほしい」
自治体には、訴え出てくれた保育士を守ったうえで、訴えを聞いてそのままにせず、重く受け止めて調査、指導し、命を守る責任を果たしてほしいと願う。
「いつ」「どこで」を書面に
今回、虐待事件が起こった静岡県裾野市の園では、園長が保育士に「口止め」するために誓約書を書かせていた。
保護者団体の役員を務め、保育に詳しい藤井豊弁護士は、「虐待の場合は通告義務があるので、仮に誓約書を書いていたとしても書いていないとしても関係なく、児童相談所や役所の保育担当課に通報するべきだ」と話す。通報をしたことによって、園に対して損害賠償を負うことはない。
そのうえで、現時点で虐待とまでは思われなくても、虐待につながりかねない不適切な保育のケースについては、同僚保育士や親が園に訴えるべきだと指摘する。
園に訴えても変わらない場合…
- 【視点】
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