記録更新中のインド映画「RRR」 研究者をうならせた細部の多様性
イギリス植民地時代のインドの独立運動の闘士2人をモデルにしたアクション映画「RRR」(S・S・ラージャマウリ監督)が、世界で注目を浴びています。日本では昨秋から公開。いったんは映画館での上映が終了したものの、ファンの要望を受けて昨年末から国内各地で「復活上映」を遂げました。その後、今年2月に国内の興行収入が10億円を突破し、インド映画の歴代最高も記録。アメリカでは複数の映画賞の外国語映画部門などでノミネートされ、ロサンゼルスで12日にあった第95回アカデミー賞では、インド映画初の歌曲賞受賞も果たしました。
インドに関する深い知識がなくても楽しめるアクション作品ですが、歴史や文化に根ざした描写も少なくありません。アジア映画研究者の松岡環さんに、作品の背景や細部について解説してもらいました。
「RRR」は1920年代、イギリス植民地時代のインドが舞台。イギリス人のインド総督の妻にさらわれた少女を助けようと、総督の邸宅があるデリーで潜伏するビームと、大英帝国への抵抗を胸に秘めた警察官のラーマが出会い、2人は親友となります。この記事には、映画の内容に触れる「ネタバレ」の部分があります。
――日本では昨年秋に「RRR」が封切られましたが、いったん公開が終わったのに、年末から「復活上映」が始まりました。この人気ぶりをどう受け止めましたか?
「RRR」までは、日本では「ムトゥ 踊るマハラジャ」(1998年に日本公開)がインド映画では最高の興行収入を記録していました。「ムトゥ」を超える映画が出るまで約四半世紀かかったのですね。
「RRR」のラージャマウリ監督は前作「バーフバリ」2部作、特に2作目の「バーフバリ 王の凱旋」が日本でもヒットしました。「あのバーフバリの監督」の最新作ということで、「RRR」がよく見られたという側面があるのかなと思います。
ただ、「RRR」について面白いなと思ったのは、ふだんはインド映画になじみがない人も見に行っているようなんです。
記事後半では、ビームがイスラム教徒のふりをしていた意味や、エンドロールに日本でもなじみのある偉人が登場しなかった理由を解説します。
例えば、私の近所に住む主婦…
- 【視点】
現代史やナショナリズムに関心を持つ記者として、歴史のエンタメ化はどこまでありなのだろうとよく考えます。この映画は先週見たばかりでして、この記事を読んで、なるほどその辺りに細かい配慮もあったんだなと考えさせられました。でも、そう難しく考えなく
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