第1回ベビーカーで満員電車に乗り込める国 出生率3.0の「理由」探った
有料記事「出生率3.0」は幸せか イスラエルから少子化問題を考える
エルサレム=高久潤日中の路面電車は、ごった返している。停留所でドアが開くと、降りる人の波に逆らうように、満員の車両に1人の女性が乗り込んできた。
双子と思われる赤ちゃんを連れた母親だ。幅1メートルはありそうな2人乗りのベビーカーを、両手で力強く握りしめている。
降りようとしていたところをベビーカーに阻まれたり、車輪に靴を踏まれたりした数人の客が、顔をしかめた。
【連載】「出生率3.0」は幸せか イスラエルから少子化問題を考える
女性が生涯で産む子どもの数が3.0人と、先進国で最も多いのがイスラエルです。仕事か育児か、で悩むこともないようです。なぜ可能なのか、異次元の対策が必要なほど少子化が進む日本との違いは何か、を探ります。
母親も負けていない。人混みをベビーカーで突いて押し分ける。ようやく位置を確保して息をついた。
これが東京だったら、どうだろう。
子連れの親の多くが、「すみません」と何度も口にしながら、肩をすぼめて申し訳なさそうにするかもしれない。場合によっては、「迷惑だ、ベビーカーをたため」などと小言すら言う乗客もいるだろう。
だが、ここは東京でも、日本でもない。
中東のイスラエルだ。
子連れの親が謝罪を強いられる光景には出会わない。レストランで子どもが大騒ぎをしても、周囲は気にしない。
日本と比べると、「子どもが王様」のようだ。
イスラエルでは2021年、1人の女性が一生のうちに産む子どもの数(合計特殊出生率、中央統計局調べ)が3・00だった。イスラエルを含む先進国38カ国が加盟する経済協力開発機構(OECD)では、群を抜いている。
各国の比較が可能なOECDの20年のまとめによれば、イスラエルが2・90とトップで、メキシコが2・08、少子化を政策で克服した「成功例」とも評されるフランスが1・79で続く。少子高齢化に悩む日本は1・33だった。
多くの先進国が少子化に悩むなか、なぜ、イスラエルは「子だくさん」なのか。
取材した記者にも子作りを勧めてきた
「子どもがいなければ『なぜ…