論破でも言葉だけでもない 哲学者・永井玲衣さんが問う「対話」の形

【動画】永井玲衣さんインタビュー=藤原伸雄撮影
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 オンラインで、いつでも誰とでも「つながれる」時代。「対話型AI」まで登場し、ネット空間では多くの言葉が飛び交い、「炎上」や「論破」も日常化しています。

 私たちは本当に対話できているのか。そもそも対話とは何なのか。参加者と共に考えを深めていく「哲学対話」を続けてきた哲学者の永井玲衣さんは問いかけます。「タイパ」が重視される時代、今こそ「立ち止まり、聞き合う」ために、大切なことは。

哲学者・永井玲衣さんのRe: 対話への期待の裏側とひねくれた希望

皆さんの声をもとに、永井さんと改めて考えた「対話」とは。

対話ってそもそもなんだと思いますか?

 ――永井さんは学校や企業などに足を運び、「哲学対話」を開いています。どんな試みですか。

 参加者から「問い」を出してもらい、それについて皆で考えを深めていく。そんな場を10年ちょっと開いてきました。

 そもそも対話というものはとても難しい。対話をしたいけど、見たことがない、どんな姿をしているか知らない。どうやってできるかも分からない。だから試みる場所が自分にとって必要でした。手元に手繰り寄せようとしてきたのに、コロナ禍によってリアルのやりとりが難しくなり、遠くへはね飛ばされてしまったかのような感覚を持っています。

 ――オンラインでのやりとりは、何が違うのでしょうか。

 対話とは、言葉のやりとりでもありますが、それだけじゃない。文脈の共有、振る舞い、言いよどみなど、その場所、体全体で行われるもの。それが、1枚の布で口を覆われ、オンラインになって、ほとんど言葉だけでやりとりしなければいけなくなりました。

「あなたがいないと考えられない」から生まれる

 ――ネット上では激しい言葉が交わされ、「論破」という言葉も飛び交っています。

 「論破」って話し合いの一形態、議論の手法の一つと捉えられている。

 けれど、あれは競争原理の一…

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この記事を書いた人
佐藤美鈴
デジタル企画報道部|Re:Ron編集長
専門・関心分野
映画、文化、メディア、ジェンダー、テクノロジー
  • commentatorHeader
    マライ・メントライン
    (よろず物書き業・翻訳家)
    2023年4月19日10時0分 投稿
    【視点】

    この考察は極めて鋭くまた納得できる内容だが、同時に大きな「困難」を感じさせる。なぜならここで提起されている「対話」は、参加者の高度な知性を必然として要求しているからだ。「教養を」といってもいいだろう。世間の現実をみるに、正直、それはかなり贅

    …続きを読む
  • commentatorHeader
    遠藤謙
    (エンジニア)
    2023年4月20日9時57分 投稿
    【視点】

    とても納得。 テクノロジーの進化とともに人は退化するという話はよく耳にする。そしてそれは多くの人に当てはまるのかもしれない。さらにタチの悪いことに多くの人の心には承認欲求がしつこくこびりついてしまうようだ。 東浩紀さんのゲンロンカフ

    …続きを読む
Re:Ron

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対話を通じて「論」を深め合う。論考やインタビューなど様々な言葉を通して世界を広げる。そんな場をRe:Ronはめざします。[もっと見る]

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