変わる米軍、中国念頭に日米韓で協力強化 課題突きつけられる自衛隊

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記者解説 国際報道部・牧野愛博

 日本周辺での軍事的な緊張が高まりつつある。米軍は中国を念頭に再編を進めており、日本や韓国との協力も重視する。4月26日には米韓首脳会談が行われ、米国のいわゆる「核の傘」を含む拡大抑止力の強化などで合意した。自衛隊は米軍との指揮権の問題があるなど、安全保障をめぐる課題は山積みだ。

 自衛隊の折木良一・元統合幕僚長は「西太平洋の軍事バランスが崩れかけている。2025年には中国の軍事力が米国を上回るという予測も出ている」と危機感を示す。

 米議会調査局(CRS)の21年3月9日付報告書は米中両軍の保有艦艇数を比較している。中国に最も有利なデータをもとに予測すると、20年時点で米軍の297隻に対し、中国軍は360隻で、30年には425隻に達する。中国軍は多くのミサイルを保有している。「空母キラー」とされる対艦弾道ミサイル「東風(DF)21D」(射程1500キロ)や、米領グアムも攻撃範囲に収める中距離弾道ミサイル「DF26」(同4千キロ)などだ。海軍も増強しており空母3隻を保有している。

 中国の対米軍事方針とされるのが「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」戦略だ。九州から台湾東側を通り、南シナ海を囲むように延びる「第1列島線」のなかへの米軍の侵入を阻止する。伊豆諸島を起点に小笠原諸島、グアム、サイパン、パラオを通りマリアナ諸島まで延びる「第2列島線」のなかで、米軍による自由な作戦展開を許さないとする。

 こうした戦略を受けて米軍は変化している。米軍は海軍や空軍の戦力が大きく、従来は制海権や制空権を握ることを前提に部隊を動かしてきた。これが崩れつつある。

 米軍は第1列島線周辺では、海や空における優勢が必ずしも保証されないことを想定している。部隊も大きく二つに分けることにした。海や空からの脅威にさらされる区域に展開する「インサイド・ユニット」と、比較的安全な区域の「アウトサイド・ユニット」だ。

 マーク・ガンジンガー元米国…

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