第1回「侵攻はナチスとの戦い」プーチン政権がつくる「アナザーワールド」

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 「米英の手によるナチズムやファシズムがロシアを滅ぼそうとしている。戦いでの連帯を呼びかけ、再び勝利する」

 ロシア共産党の重鎮ジュガノフ委員長は5月1日、メーデーの集会で、ウクライナ侵攻の原因が米欧にあり、第2次世界大戦のナチス・ドイツとの戦いと同様にロシアが勝つと訴えた。

 ウクライナへの侵攻を続けるロシア。1年以上経ったが、反戦運動は影を潜め、いまもプーチン大統領は高い支持率を維持している。その大きな要因がメディアと一体で拡散されている政権のプロパガンダだ。多くのロシア人が見る世界は、日本での認識と大きく異なる。ロシアの人たちが住むのはまるで「アナザーワールド」となっている。

 プーチン政権下で最重要の祝日と位置づけられている9日の対独戦勝記念日が近づき、ロシアでは政権のプロパガンダを国民に刷り込むための様々な行事が開かれている。

 モスクワの「大祖国戦争中央博物館」で昨年12月から始まった「真の遺訓」展もその一つだ。

 館内の壁のスクリーンに二つの顔が並ぶ。第2次世界大戦中のソ連軍兵士とウクライナ侵攻に参加するロシア軍兵士。どちらもロシアが誇る「英雄」だ。

 第2次大戦中の独ソ戦を指す大祖国戦争の兵士と現在の兵士を、「包囲した敵を道連れに自爆した」「戦場で負傷兵を助け、自らもけがをした」といった功績や似た年齢で組み合わせ、世代間の継承を訴える。

 ウクライナ東部ドネツク州にあった大祖国戦争の兵士らを刻んだ有名な碑を、ウクライナ侵攻の兵士に置き換えたモニュメントなどが飾られていた。

戦地で息子が重傷、浮かべた涙

 「この展示は、まさにロシア…

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