第3回温暖化「見て見ぬふりしてた」 スキー渡部暁斗が勧める優しい入り口

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聞き手・市野塊
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 ノルディックスキー複合で四つの五輪メダルを獲得している渡部暁斗さん(35)は、昨年から企業から受け取ったスポンサー料を気候変動対策にあてています。現役選手でありながら、なぜそこまで熱心なのか。「スポーツ選手は感動を与えるだけではだめだ」と言います。

 ――スポンサーの広告料を実質的な二酸化炭素削減にあてていると聞いています。

 環境問題は、自分にできることは何かと考えると、結構難しいですよね。手始めに、自分の競技活動や、普段の生活を通した年間の温室効果ガスの排出量を国連のサイトで調べてみました。そうすると、海外遠征など飛行機での移動があるため、多い時で「70トン」くらいで、普通の人より2倍くらい多い。まずは、この排出量を実質ゼロにするところからかなと思いました。

 ちょうどヘルメットなどのヘッドギアに載せるスポンサーの契約が満了になって、空きがでることになりました。マネジメント会社でもある、バックカントリースキーの仲間と話をしていて、「エコパートナー」という形でスポンサーを募ってみたらどうだとアイデアをもらいました。環境に優しい製品とかサービスを展開している企業だけに限定するパートナーです。いまは環境に配慮したスニーカーを作る米企業にお願いしています。

 具体的には、温室効果ガスの削減・吸収量を「クレジット」として売買できる「J―クレジット制度」を利用しています。100万円以上を、長野県木曽町の植樹活動に使って、実質的な二酸化炭素削減にあてています。

肌で感じる変化

 ――気候変動問題に関心を持ったきっかけは何でしょうか。

 欧州に行って、毎年スキーという競技を通じて雪山の景色の変化っていうものを見ていく中で、ここ数年、思いが強くなってきました。

 秋になると練習でオーストリアなどの欧州の氷河に行きますが、ここ数年は雪がなくて練習できないことがあります。クロスカントリーの10キロと5キロの二つのコースのうち、10キロは使えなくて、5キロでの練習だけとか。雪がなくて氷だけになってしまって、走れる状態じゃないと。

 10年前はそんな状況はなかった。行ったら、確実に走れました。もちろん年によって波はあるんですけど、3年に1回が、2年に1回みたいな変化は感じます。

 これまでは競技に集中していたこともあって、見て見ぬふりみたいなところが多かったです。「雪が減っているな」ぐらいに思ってはいたけれど、競技を優先していました。

 でも、ある程度結果を出してきて、少し心に余裕が持てるようになってきた。その時に、今まで臭いものにふたをしてきたところに目を向けないといけないと思い始めました。

 ――トレーニングにも影響しているのですね。

 冬の競技ですが、夏のトレー…

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この記事を書いた人
市野塊
科学みらい部兼国際報道部|環境省担当
専門・関心分野
気候変動・環境、医療、テクノロジー
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    井本直歩子
    (元競泳五輪代表・途上国教育専門家)
    2023年6月28日16時0分 投稿
    【視点】

    このお話を最初に聞いた時、ようやく日本にも気候変動問題に本気で取り組むアスリートが出てきた、と心が震えました。世界で何人かの気候変動に取り組むアスリートたちに会ってきましたが、スポンサー料をカーボンオフセットに充てる、という行動を聞いたのは

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    蟹江憲史
    (慶應義塾大学大学院教授)
    2023年6月28日16時0分 投稿
    【提案】

     渡部さんの活動には頭が下がりますし、素晴らしいことだと思います。これだけ有名で実績のある選手が取り組みを進めることは、社会的にも良い影響を与え、スポーツを通じて世界を良くすることもできる、ということを教えてくれます。  他方、こうしたこ

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