新居浜、大隈裏、杉並で 鴻上尚史さんが著した三つの場所と劇的人生
劇作家で演出家の鴻上尚史(こうかみしょうじ)さん(64)が、かつての実家の住所を書名にした自伝小説集「愛媛県新居浜市上原(うわばら)一丁目三番地」(講談社)を出版した。父母を失い家財を処分する前夜、実家に一人で過ごした時にこみ上げた思いが執筆のきっかけとなったという。実家を含む三つの場所を題名にした中短編で人生を振り返っている。
鴻上さんは早稲田大学在学中の1981年に劇団「第三舞台」を結成。80年代小劇場ブームの立役者となり、小説、エッセー、ドラマ、映画など創作の第一線で活躍を続けている。
コロナ禍の初期に国が文化・芸術活動の自粛を促す中、鴻上さんはバッシングを恐れず休業補償の必要を主張した。同調圧力にあらがう反骨精神がいかに育まれたかは、父母の思い出と別れを描いた表題作からうかがえる。
鴻上さんの両親はともに教員だった。文部省と対立していた日教組の組合員だった両親は遠方の学校への勤務を命じられる。
父が地元に転勤して戻る願いを込めて建てた個性的なデザインの一軒家で、鴻上少年は四国山脈を眺めながら孤独に耐えていた。演劇に目覚めたのは、劇団の地方公演を見たその頃だった。
小説の2編目は早稲田大の大隈講堂裏でのエピソードが書かれています。鴻上さんと同窓の記者には、取材とは別に届けたかったメッセージがありました。記事後半で紹介します。
新居浜西高時代は生徒会や演…