「構造と文化が変わるのに予想以上の時間」 識者が見る精神科医療
国が精神科医療を入院から地域生活中心とする方針を明確に掲げて約20年。ですが現在、1年以上の長期入院をしている患者は全国に約16万人います。精神障害のある人たちが自分らしく生きられる社会はどうあるべきなのでしょうか。国立精神・神経医療研究センター地域精神保健・法制度研究部長の藤井千代さんに聞きました。
――長期入院が多いという精神科医療の現状をどうみていますか。
精神病床数は漸減していますが約30万床で、入院患者は約26万人のうち1年以上の長期が6割を超え、5年以上も約3割です。
長期入院患者のうち、住まいの確保や生活の支援体制が整えば退院できる人はいますので、地域のケア体制をしっかり整えていくことが大切です。
長期入院患者を疾病別にみると、統合失調症の人が多く、一般的な薬物療法では治療効果が得づらい「治療抵抗性」の人も一定割合を占めると思われます。「治療抵抗性」の統合失調症に効果があるとされる薬を適切に使って長期入院を減らした例もあり、薬物療法を見直すことで長期の入院患者を減らしていける余地もまだあると思います。
病院の経営的な側面が指摘されることもあります。日本では、精神病床の約9割が民間です。精神科病棟の診療報酬が低めで、高い病床稼働率を維持しないと経営が厳しくなるという面も否定できないと思います。
「スティグマ」も課題
――民間の精神科病院が多い…
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