性別を変更する際に、「生殖能力を失わせる手術」を求める性同一性障害特例法の要件は憲法違反と最高裁が判断しました。「トランスジェンダー入門」の共著などがある高井ゆと里・群馬大准教授(生命倫理学)は「特例法が何のためにあるかを考えてほしい」と指摘します。
――今回の最高裁の決定をどう受け止めますか。
生殖能力を失わせる手術を要件とすることを「違憲」としたのは、当然の判断です。戸籍の性別変更と引き換えに、国家が医療措置を通じた不妊化を一律に強いるのは、体の侵襲を受けない権利や、子どもを産み育てるかどうかに深くかかわる「性と生殖に関する健康と権利(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)」を侵害しています。
性別の表記を変更したい人の中には、手術を望んでする人ももちろんいますが、そうした人たちは自分のタイミングとニーズに応じて手術をすればいい。それだけです。そうではなく、健康上の理由や金銭的な理由で手術をしたくてもできない人や、リスクを冒してまで手術をしたくない人もいます。そうした人にまで国家が結果として手術を強いていることが問題なのです。
――そもそも、なぜ不妊化要件ができたのでしょうか?
日本の特例法ができた20年…
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