ロシアに大国をやめろと強制することは… 高坂正堯の30年前の言葉

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田島知樹
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 戦後を代表する国際政治学者、高坂正堯(こうさかまさたか)(1934~96)の「新著」が出た。冷戦終結という時代の転換点で開かれた講演を元にした。歴史や哲学など幅広い教養を備え、バランス感覚を大事にした高坂の歴史語りは、複雑な現代の国際政治を考える一助にもなるはずだ。

 「ロシアに大国をやめろと強制することはできない」「ユダヤ人は偉大な民族ですが、国をつくると狂信的でありすぎるのかもしれません」。あたかも今の国際政治を論じているかのようだが、30年以上前の言葉だ。

 新潮選書から出た「歴史としての二十世紀」は、1990年1月から6月にあった連続講演を元にしている。講演を主催した新潮社が当時の録音テープを保管していた。今回26年ぶりの新著として世に出ることになった。

 「高坂先生らしいバランス感覚がよく出ている」。そう話すのは高坂の弟子で京都大教授の中西寛さん(61)。バランス感覚とは、まずその歴史観に表れている。高坂は20世紀という時代を「戦争の世紀」「恐慌」「共産主義とは何だったのか」などに分けて講演した。それぞれのテーマ内では軍事や経済、哲学、時には小説や文明論などの視点をもって複合的に語る。

記事の後半では、ロシア・ウクライナ戦争を分析する視覚として、高坂のバランス感覚がどう生きるかを説明します。

現実主義者だけど・・・

 高坂は28歳で「現実主義者…

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この記事を書いた人
田島知樹
文化部|文化庁担当
専門・関心分野
文化政策、国際政治、特に欧米の外交史