能登半島地震で震度6強の揺れに襲われた石川県珠洲市内の病院には、津波に巻き込まれたり、崩れた家の下敷きになったりして負傷した人が次々に運び込まれた。4日まで現地で治療にあたった愛知県大口町の「さくら総合病院」院長の小林豊さん(50)は、「状況は最悪だ」と話す。
地震が発生した1日の夜、小林さんは急きょ病院の幹部会議を開き、みずから現地に入ることを決めた。
救急医として東日本大震災や熊本地震でも現地で医療支援した経験をもとに、外から災害派遣医療チーム(DMAT)が到着するまで医療者が不足すると予想したためだ。
翌2日朝、小林さんと看護師1人、理学療法士3人など病院スタッフ計8人は、ドクターカー2台に乗り出発した。生存率が下がるとされる「発生後72時間」までの活動を想定し、車には薬剤、点滴、医療機材、水、食料を積み込んだ。
まず大規模な火災が起きた輪島市をめざしたが、能登半島の国道は途中から土砂崩れや地割れで寸断されていたため、目的地を急きょ珠洲市に切り替えた。
午後8時、市役所から約1キロにある珠洲市総合病院(163床)に到着した。待合室は患者だけでなく、避難してきて毛布にくるまる人であふれていた。
救急外来には患者が断続的に運び込まれ、3~4人の勤務医が不眠不休で対応し、疲れ切った様子だった。勤務医を休ませるため、小林さんが2日と3日の夜中に救急患者を診療した。
津波のまれた患者「家も自分も」
救急車や自衛隊は一晩に20人近くの患者を運んできた。津波の渦に巻き込まれ、がれきにぶつかり骨折したという患者もいた。
患者は「寄せてはかえす波が…
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