最大震度7を観測した能登半島地震では、半島の幹線道路が大きな被害を受けた。発生から10日以上過ぎても陸路でのアクセスが難しい地域が残り、医療を必要とする人たちを速やかに運ぶドクターヘリの出動が続いている。
「現場は混乱の渦中だった」
地震発生から4日目、被災地に入った済生会福岡総合病院(福岡市中央区)の救命救急センター・久城(くじょう)正紀医師(39)はこう語る。
久城さんは、大規模災害時に負傷者の緊急治療などにあたる技能をもった日本DMAT隊員。福岡県が組織するDMATロジスティックチームの一員として金沢入りし、石川県庁内の航空運用調整班と部屋に詰めた。
チームの仕事は、各地から入る被災情報を分析し、けが人の搬送や医療担当者の割り振りをすることで、いわば医療救護の司令塔だ。
ときには怒声も 緊迫した現場
だが、もたらされた情報はときに正確さに欠けた。
「現場はどこだ!」「状況は?」と、しばしば怒声も飛び交った。
道路はあちこちで寸断され、救急車が容易に入れなかったため、患者の搬送にはヘリコプターが力を発揮した。
医療機器や医薬品が搭載されたドクターヘリは、石川県の配備は1機。近隣の富山や福井のほか、長野、岐阜、愛知など近県の協力を得て、5機態勢で任務にあたった。自衛隊や消防、警察など他機関のヘリの応援も受けた。
日本海側は冬季、荒天でヘリが飛べない日が多い。
しかし、発災直後の数日間は…