第2回泥だらけの遺体に手を合わせた刑事たち 痛恨だった遺体の取り違え
編集委員・石橋英昭
警察ヘリのライブカメラが、住宅群をのみこむ津波をとらえていた。宮城県警捜査1課長だった阿部英明(70)はそれを見て、とっさに「背負っちまったな」と思ったという。
捜査1課は、殺人や強盗、誘拐など強行犯罪や変死事案を扱う部署だ。その長として、2011年3月11日が最後の日になるはずだった。
内示を受けていた異動は吹き飛んだ。腹を決めた阿部は、上司の刑事部長に「刑事部総員、私の指揮下に入れさせてください」と告げる。そして夕方のうちに、各課の課長補佐(警部)十数人を会議室に集めた。
「1個班13人で検視班を編成する。君らが班長になってくれ」「しばらく家には帰れない。作業着と着替えを用意して、あす朝5時に集合だ」
津波の来ていない仙台市内の警察署から、検視用の機材をかき集める。遺体を包むプラスチック製の納体袋は備蓄がない。代わりのブルーシートを、ホームセンターに買いに走らせた。
刑事たちはこれまで何十、何百もの遺体を扱ってきたプロだ。ひるむことはない。だが現実は、彼らの覚悟を超えていた。
当初の検視班は16班、約2…