第5回「若手よ、パラダイムシフト起こせ」 「マニフェスト」の北川正恭氏
1990年代。政治改革の旗を掲げ、自民党から相次いだ離党者の一人が、北川正恭・元三重県知事(79)だ。あれから30年。「マニフェスト(政権公約)」ブームの火付け役として、民主党による政権交代の機運醸成にも貢献した北川氏は、今の野党をどうみるのか。
――政治改革から30年が経ち、裏金の問題が出てきました。
英国のチャーチル元首相の言葉に「民主主義は最悪の政治体制といわれてきた。他に試みられたあらゆる政治体制を除けば」というものがある。民主主義は不完全なもので、絶えずメンテナンスをする必要があるという国民意識が醸成されなければいけなかった。
メンテナンスで最も良い方法は政権交代だ。10~15年に1度くらいあったほうがいい。権力は必ず腐敗するという欠点を補うのが政権交代だ。そのシステム構築をしないといけない。決定権がある与党には献金が集まってくるが、野党は不利だ。例えば野党に政党交付金を手厚くするくらいの配慮は必要だ。
――なぜ裏金の問題が見過ごされたのでしょうか。
90年代の政治改革は、細川政権を作った日本新党や新生党など7党1会派と、野党に転落した自民との間でぎりぎりの協議が続けられ、妥協せざるをえなかった面がある。そのほころびが裏金問題につながったのではないか。
――「政治とカネ」の問題への対応で、当時と今でどんな違いがありますか。
当時は政治改革の議論の中で自民から党内を批判する議員が出てきた。その中で、自民を離党した人が新党をたくさん作った。現体制が破壊されるようなことだった。
あのときの政治家は与党か野党かではなく、改革派か守旧派に分かれることになった。「狂気の時」だったが、あの熱気を今、感じられないのは残念だ。
自民にも野党にも言えることだが、若手が静かすぎる。パラダイムシフト(考え方の大転換)を起こす絶好のチャンスなんだという感覚を持ってほしい。自民の若手が執行部批判や改革を声高に叫ぶように仕向けるのが野党の役割だが、それができていないのが野党の弱いところだ。
――有権者は野党に何を期待しているのでしょうか。
最終的に多数決で物事を決め…
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