「原爆の父」とされる物理学者の半生を描く米国映画「オッペンハイマー」は、米アカデミー賞で作品賞など7部門を受賞した。12日夜、被爆地の広島で学生向け試写会が開かれ、広島ゆかりの作家らのトークイベントもあった。
「もっと核兵器の恐ろしさが描かれてもよかったんじゃないか」
試写会後のトークで元広島市長の平岡敬さん(96)はそう話した。「複雑な彼の性格を描いた作品で、そこに核兵器の問題を追及するのは無理があるかもしれない」とした上で、被爆地の広島・長崎の描写がないことに疑問を呈した。「アメリカ人の命を救うために(原爆が)使われたんだという結論に持っていかないと、という描き方になっている」
映画は、原爆を開発した「マンハッタン計画」のリーダーで物理学者のロバート・オッペンハイマー(1904~67)の視点で、原爆の開発から投下、彼自身のその後の人生を描いた。CGに頼らない迫力ある映像づくりに定評がある英国出身のクリストファー・ノーラン氏が監督を務めたハリウッド映画だ。
ただ、被爆地の惨状は描かれず、米国で「英雄」とされたオッペンハイマーの心象風景として被爆者を思わせる表現があるにとどまる。
森達也さん、アーサー・ビナードさんも語った
米国出身で広島市在住の詩人…
- 【視点】
いよいよ、映画「オッペンハイマー」が日本で公開される運びとなりました。 在英の筆者は昨年夏、鑑賞しました。日本ではどのように受け止められるのか、特に広島や長崎に住む方、それも若い方がどう見るのか、大変興味深かったのですが、この記事でさまざ
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