ヨシタケシンスケさんの断言しない生き方 「かもしれない」を大切に
「りんごかもしれない」などのヒット作で知られる絵本作家ヨシタケシンスケさん(50)の初の大規模展覧会「ヨシタケシンスケ展かもしれない」(長野朝日放送、朝日新聞社、白泉社主催)が、5月12日まで長野県の上田市立美術館(サントミューゼ)で開催されている。全国巡回展で、上田は10カ所目となる。
会場には、発想の源であるスケッチの複製約2500枚が壁一面に並ぶ。「プライベートな記録」として20年以上描きためてきたスケッチは、作家にとっての「逃げ場所」なのだという。展示に込めた思いを、ヨシタケさんに聞いた。
つらかった会社員時代の救い
――ヨシタケさんにとって、スケッチとはどういう存在ですか。
リハビリです。僕はネガティブなものの考え方をして、すぐに世の中とか、自分とか、生きているのが嫌になっちゃう。で、自分を盛り上げないといけない。世の中捨てたもんじゃないじゃないか、こう考えればおもしろがることもできるじゃないかと自分に言い聞かせるために、必死におもしろがろうとしてきた記録なんです。
作家になる前から勝手にやっている、日記みたいな感じです。当時は会社員で、とにかくつらくて、絵と言葉で愚痴を書くということが自然と生まれました。気になったことを書いてニヤッとして、ちょっと満足する。おもしろいと思うものの記録を取り続けて、自分自身が救われていました。
精神衛生上必要な行為としてやっていただけなんですけど、そこで書いた一言が絵本になったり、ネタになったりして、今の仕事につながっています。
結論出さず「保留」することに自信を
――展覧会のテーマは「かも…
- 【視点】
我が家の本棚にはヨシタケシンスケ氏の絵本が並んでいます。娘の習い事の待合室に『りんごかもしれない』が置いてあり、それを読んで娘がすっかり気に入ってからというもの、ちょこちょこ買い集めました。大人が読んでもオモシロくて、僕もすっかりファンにな
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