能登半島地震では地域で暮らす外国人たちも被災しました。「言葉の壁」もあって彼らは災害弱者とみられがちですが、日系ブラジル人で移民問題に詳しいアンジェロ・イシ武蔵大教授は、外国人が「助ける側」にもなると話します。そのカギとは。
移民政策ない中で「最も進展あった」
――防災や災害が起きた時の「言葉の壁」は、大災害が起きる度に問題にされてきました
外国で暮らす人たちは「言葉の壁」「制度の壁」「心の壁」という三つの壁に直面すると言われます。日本では、現実には多くの「移民」が暮らしていますが、「移民」という言葉を避けたがる政治家もいて、国は「移民政策はとらない」という建前を貫いています。そのため「移民政策」は進みませんでしたが、2000年代から多文化共生の施策はそれなりに進められてきました。その中でも言葉の面は、最も進展があったと、一定の評価をしています。
言葉の壁を解消するには、使う語彙(ごい)などを絞って漢字を減らした「やさしい日本語」を含め、情報を多言語化することと、できるだけ多くの人に日本語を学ばせることの、二つのアプローチがあります。後者では日本語教育推進法が19年に施行されましたが、このように国が号令をかけてやることが、いまの日本社会ではまだ必要だと思っています。
――能登半島地震で、各テレビ局は「やさしい日本語」や英語の字幕で、津波からの避難を呼びかけました
兵庫県北部にも津波警報が出ましたが、県内で放送するサンテレビは、地元のブラジル人がポルトガル語で「津波が来るからすぐ逃げよう」と手書きしたボードを持ち、避難を呼びかけました。神戸の放送局だけに、阪神・淡路大震災からの積み重ねを感じ、感慨深いものがあります。私も各チャンネルをチェックしていましたが、テレビ朝日など民放が、いち早く「やさしい日本語」や英語で呼びかけていたのが印象的でした。
多言語化した情報は届いているか
――役所などのウェブサイトでも、外国語や「やさしい日本語」を目にするようになりました。ただ、実際に届いているでしょうか
残念ながら、せっかく多言語…
- 【視点】
近年「言葉の壁」に対する取り組みは最も進展があったとの指摘、同意です。多言語化もやさしい日本語の活用も、日本語学習機会の推進も、それぞれに前進してきていることを実感します。 ただし、多言語化した情報でもまだ届いていないとの指摘もその通りで、
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