車を持たない人や高齢者に、安価な移動手段として頼られてきた路線バスの維持が東京でも難しくなりつつある。コロナ禍による働き方の変化に、運転手不足が追い打ちをかける。地域の足を何とか守ろうと、自治体は手を打ち始めた。
葛飾区は30日、約3500万円を投じ、区内のバス事業者に対し、新たな補助金の制度を設けると発表した。補助の対象は、区内の営業所に勤めるバス運転手の住居手当や借り上げ住宅の費用。7月から、運転手1人あたり月額2万円を上限に補助する。区によると23区で初めての取り組みだという。
人材募集費にも補助するほか、女性運転手の採用も促す。更衣室や休憩室の整備など、女性が働きやすくなる環境設備にかかった費用の半額を助成する。
区交通政策課によると、区内を走る事業者6社は、コロナ禍を境に利用者の落ち込みや運転手不足が加速。不採算路線の減便や廃止をする動きが強まっているという。区の担当者は「地域や区民の足をこれ以上、不便にしないようにしたい」と話す。
赤字路線を抱えているのは、葛飾区だけではない。東京都交通局によると、2022年度、「都バス」の127路線のうち、99路線の収支が赤字だった。燃料費の高騰もあり、全体の収支も約17億8千万円の赤字だ。担当者は「赤字路線を黒字路線で支え、交通インフラを保ってきたが、コロナ禍以降利用者が減り、補塡(ほてん)できなくなった」と話す。
運転手の確保も課題になっている。職員の高齢化が進み、定年退職が増加。採用人数を増やしたいが、応募者数は減少傾向だという。
同局は、対策として15年度からバスを運転する資格にあたる大型二種免許がなくても「臨時的任用職員」として採用する「養成枠」を設定した。年間15人ほどを採っているという。
都区部に比べ人口が少ない多摩では、すでに深刻な影響が出ている地域もある。
日野市では23年4月、毎日、日中1時間に1便程度あった市中心部の日野駅と立川駅などを結ぶ京王バスの路線が、週末の1往復を除き実質運行廃止になった。住民からは「交通手段がなくなり非常に不便だ」という声が続出。同年5月には地元の老人クラブが中心となり、代替のミニバスの運行を求める1560筆の要望書を市に提出した。
だが、願いは聞き入れられな…