「もう悪さ、すんなよ」僕を変えた手紙 保護司との9年、突然の別れ
何度目かの逮捕で、2度目の保護観察中だった。18歳の頃、変わりたいとも思っていなかった。
新しい保護司には、うそばかりついた。
それでも、自分のような人間も否定しない人だった。いろいろな言葉をくれた。
その人は今年5月、殺害された。
お下がりだけど 大切な一着
男性(27)は、父親のいない家庭で育った。
子供の頃、毎日1人でご飯を食べるのが、すごく嫌だった。誰かと一緒にいたくて、出歩いた。お金は無い。窃盗や傷害、無免許運転などでこれまで10回以上、逮捕された。
2016年、保護観察期間の途中で、担当の保護司が代わった。新庄博志さん(60)=大津市=だった。
心を開くつもりはなかった。いろいろ聞かれても、本当のことは話さなかった。そうやって、やり過ごそうとした。
立ち直り支援を担う保護司は国家公務員だが、無給のボランティア。面接の時は自宅に招かれることもあった。
ある日、紺色のジャケットを渡された。
「よそいきの服、持ってないんか」
いつもジャージーのような格好で会っていたから、クローゼットからひっぱりだしてくれたようだ。
新庄さんもやせ形だから、サイズはピッタリ。「それ、全然着ていないから。1着、持っていたら、どこかで着られるやろ」。お下がりだけど、自分にとって初めての高価なプレゼントだった。
まだ若かった。17年、保護観察中に再び逮捕されて少年院へ。
面会に訪れた新庄さんは「大人の言うことを聞いておくべきだったろう?」。
その言葉、当時は受け止められなかった。「言葉で言うのは簡単。変わろうと思っても変われない環境で生きてきた」と反発した。
翌18年、いったん退院したが、また逮捕された。今度は姫路少年刑務所(兵庫県)へ。保護観察も終わった。
「裏切ることはできない」
新型コロナがまだ収束していなかった21年、便箋(びんせん)6枚の手紙が届いた。新庄さんからだった。
《保護観察期間中に再犯に至…