人口減少と少子高齢化は国家の一大事。社会の持続可能性が危機に瀕(ひん)している。それは理解できるものの、考えてみると分からないことも多い。どうして、こんなことになったのか。なぜ日本が特に問題を抱えているのか。人が減ることによる問題はなにか。対策には効果があるのか。わき上がる疑問を人口学の第一人者、金子隆一・明治大学特任教授にぶつけた。
あまりに低かった1970年代の出生率
――昨年生まれた日本人の子どもは72万人台と統計上、過去最少で、少子化が止まりません。なぜ、こんなことに?
「日本の人口の減り方が著しいのは、1970年代以降の出生率があまりに低いレベルだったからです。当時、高学歴化、女性の社会進出、産業構造のホワイトカラー化などが連鎖し、家族を持つ負担感が大きくなって晩婚化、晩産化が進みました。やがて結婚をしない人、結婚しても多くは子どもを持たない人が増え、出生率が人口維持に必要な『人口置換水準』を大きく割り込んで現在の状況に至っています」
「日本の少子化が特に深刻になった背景には、戦後日本が極端に経済活動優先の社会をつくったことがあると思います。一方で人々の生を支える家事・育児・介護などのケアの活動は個人的な領域の事柄として公から切り離され、低く扱われてきました。そして男女の役割分業という建て付けのなかで、女性にばかりケアの負担を強いてきた構図があったわけです」
「遅れて近代化した国家」の宿命か
――どうして、これほど急激な変化が起きたのですか?
「それには、日本が遅れて近…