第1回「悪魔」はフランスを守るか 右翼を「主役」にした28歳党首の演説
パリ=宋光祐
「あなたがいてくれたから、今の私がある」
2022年、冬の足音が近付くパリ。極右の流れをくむフランスの右翼政党「国民連合(RN)」の党大会で、3代目党首となったジョルダン・バルデラ(28)は、舞台脇から自分を見守る前党首のマリーヌ・ルペン(55)に勝利演説でこう伝えた。
85%という圧倒的な得票率で対立候補である党の重鎮を破った。はにかむような笑顔を見せたバルデラ。「彼女が私を政治に導いてくれた」。聴衆に向き直って、ルペンへの感謝の言葉を口にすると、涙をこらえて上を向いた。
1分間の沈黙。
感極まった聴衆が次々と立ち上がり、「ジョルダン」コールがわき起こった。
【連載】右翼の素顔 「脱悪魔化」の末
フランスで軽蔑の対象ですらあった右翼政党「国民連合(RN)」が欧州議会選と総選挙を経て、かつてないほどに存在感を増した。7日の総選挙の決選投票で、政党別では最も多い議席数を獲得するほどの支持を得た「普通の政党」への変貌を、どう果たしたのか。
演説の才能で聞く者を魅了す…