広島土砂災害から10年「喪失感、今も」 各地で献花、県庁では黙禱
77人が犠牲(関連死を含む)となった広島土砂災害から8月20日で10年がたった。未明にかけての豪雨で、広島市北部の山あいに近い安佐南区と安佐北区を中心に、計166カ所で土石流や崖崩れが起きた。当時、避難所が設けられた安佐南区の梅林小学校内ではこの日、慰霊碑前に献花台が設けられ、訪れた人々が犠牲者を追悼した。
午前9時過ぎに慰霊碑に手を合わせた広島市西区の川地勇さん(80)は当時、安佐南区の自宅で土砂崩れに見舞われ、妻とともに屋根からヘリコプターで救出された。「一緒に遊んだり仕事をしたりした仲間を突然、失った喪失感は10年たった今も忘れられない。私たちと同じような被害に二度とあわないよう、自分にできることはやっていきたい」と話した。
県庁舎では午前10時、アナウンスが流れ、職員が黙禱(もくとう)した。危機管理課の松岡靖樹課長は黙禱を終えた後、「過去の経験から学び、少しでも犠牲者が出ないように次の災害に備える。8月20日は防災に関わる人間にとって、そう強く思う日だ」と取材に話した。
広島土砂災害では、線状降水帯が発生し、局所的な集中豪雨が襲った。安佐北区三入では1時間雨量が最大101ミリ、3時間雨量が最大217.5ミリと、観測史上最多を記録した。この災害では、土砂災害警戒区域の指定の遅れや、避難勧告などの発令の遅れが指摘され、土砂災害防止法の改正につながった。