第2回性差分析からイノベーション 研究者が見つけた診断や生活改善のタネ
研究や開発のプロセスに積極的に男性・女性の性差分析を採り入れることで、新しい発見やイノベーションにつながる事例が出てきている。「ジェンダード・イノベーション」という考え方で、医療分野を中心に成果が出始め、そのほかの分野でも活用が進んでいる。
ジェンダード・イノベーションとは、米スタンフォード大のロンダ・シービンガー教授が2005年に提唱した概念。これまでの研究開発では、男性のみを対象や基準とすることが多く、女性に不利益が生じがちな状況があった。そこで、生物学的・社会的な性差を考慮することで、新しい発見や技術革新につなげていこうという取り組みだ。
「更年期症状のかげに、重大な病気が隠れているケースがあるんです」。長年、女性専門外来で診察に携わってきた医師で政策研究大学院大教授の片井みゆきさん(性差医療・内分泌内科)は、女性専用の診断アプリ「WaiSE」を開発した。
更年期を迎えると、性ホルモンが減少し、体や心に変調をきたす。女性の場合、症状は体のほてりや肩こり、頭痛、手足の冷えなど200以上あると言われている。最終的に「更年期障害」と診断するには、他の病気の可能性がないことを調べる必要がある。
更年期症状で、別の疾患見つかりづらく
女性専門外来での診察で、更…
- 【視点】
ロンダ・シービンガー/小川眞里子・藤岡伸子・家田貴子訳『科学史から消された女性たち』工作舎、1992年は、一見無関係に思えるかもしれないフェミニズムと科学の問題を扱うフェミニズム科学論だ。日本では2022年に改訂新装版が出されたときに、大き
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