木島始さん、新川和江さんの声が聞こえそう 手書きの文字に宿る力

有料記事くちびるに歌を

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 不思議なもので作曲の筆が乗っている時は、それ以外のもろもろの仕事、例えばメールの返信や原稿書きなども次々に片付く傾向にある。部屋を掃除し、洗濯物をたたみ、三食をまあまあ許せるレベルで自炊するなどの日常雑務も含め、作曲の進捗(しんちょく)が芳しい時は生活全体が快調に回転するようだ。あるいは暮らしぶりがきちんと回ることで、頭の中の音符も機嫌良く踊り出すということかもしれない。

 ところで、今年の夏は新作初演の機会が特別に多かった。四つの作品の初演日程がお盆前の約3週間に集中したため、リハーサルや本番であちこち出かける日が連続した。つかの間仕事部屋にていざ作曲と身構えたとて、気もそぞろといった具合。あたかも夏祭りのように上気した日々が過ぎ去ったあと、こんどは喪失感に見舞われて、思考が作曲に向かわないという始末である。

 ふと部屋を見回すと、書類や本、開きっぱなしの楽譜などが散乱している。デスクはもちろん、床やピアノの上にまで。

 さらにまずいことに、連日出かけていた間に届いた頂き物へのお礼状も書けないままになっていた。これ以上お礼が遅くなってはいけない。部屋の原状回復を後回しにして、まずはペンを執ることにする。

 神奈川県茅ケ崎市の女声合唱…

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