第3回孤独のリスク、可視化されないミドル期 「まずは動いて」と社会学者
都心でひとり暮らしする35~64歳の現役世代の中には、豊かさと自由を享受している人がいる一方で、「孤独」がもたらすリスクにさらされている人も少なくない――。そう指摘するのは、社会学者の宮本みち子・放送大学名誉教授だ。調査をもとに「東京ミドル期シングルの衝撃」を出版した宮本さんに、孤独とのつきあい方を聞いた。
――「単身世帯」「孤独」というと、メディアもまずは高齢者を取り上げます。ミドル期の孤独に関心を持ったきっかけは?
日本で「ひとり暮らし」は38%を占めますがここ数年、高齢者だけでなく現役世代でも増えています。東京区部はその先端を歩んでおり、ミドル期人口の3割弱がシングルです。出生率は全国最下位です。
この数は今後も増加が続くと予想されており、ひとり暮らしがマジョリティーになることが日本社会をどう変えるのか、総合的に捉える必要があります。
しかし行政は現役世代には無関心で、政策対象から抜け落ちています。地域から孤立し、身内が少なく、将来に不安を抱える人が増えている現実にかかわらなくていいのか、という危機感が背後にありました。
――危機感とは?
一つは、社会的に孤立し、悩みがあっても相談する先がないシングルの現在と将来です。もう一つは、社会関係が希薄なシングルが多数を占める大都市への懸念です。
私たちは、東京23区にかかわる課題について考える特別区長会調査研究機構のプロジェクトで調査を実施し、回収された約2600人のシングルの生活と意識を明らかにし、インタビューも行いました。
とくに女性に多かったのですが「転職を重ねるうちに収入が減ってきた」「今のままでは老後の貯金がなく、家賃も払えなくなるのではないか」という不安を訴える人が少なくありませんでした。
体調不良をきっかけにひとり暮らしのリスクに気づく人もいます。ある女性はがんの治療後、体調が優れず、ときどき友人が食事を持って訪ねてきてくれるけれど、孤独と不安を感じると話していました。
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