「ナチスのスパイ」扱いされた移民たち ブラジル政府が向き合う日は

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イタピランガ=軽部理人
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 「日系移民を迫害した過ちを認めます」

 7月25日、ブラジルの首都ブラジリア。第2次世界大戦中と戦後に迫害された日系社会に対し、ブラジル政府が初めて謝罪した。

 住んでいる土地から強制退去させられたり、無実の罪で投獄されたり。被害に遭った移民は数多いが、当事者たちが積極的に語り継がなかったことから、迫害の事実は日系社会の間でもほとんど知られていなかった。

 実は、戦時中に迫害されたのは日系移民だけではない。同じ枢軸国だったドイツ系やイタリア系移民も同様の目に遭ったと、ジャーナリストらの報道でわかっている。

 政府による日系社会への謝罪について、ドイツ系移民はどう感じているのか。ドイツ系が多く住むブラジル南部に向かった。

ドイツ語が飛び交う、アルゼンチンとの国境の街

 街へとつながる入り口の道路には、欧州風のアーチがかかっていた。

 サンタカタリーナ州イタピランガ。空港がある最寄りの都市から車で4時間ほど山奥に入った人口1.7万人の小さな町だ。西はアルゼンチンと国境を接する。

 農業を主産業とするイタピランガの最大の特徴は、ドイツ系住民の存在だ。「人種のるつぼ」であるブラジルだが、イタピランガの住民はほとんどが白人で、ドイツにルーツを持つ。街ではドイツ語が通じ、ブラジル生まれだが公用語のポルトガル語を解さない住民も高齢世代を中心に多い。

 イタピランガ近郊に住む歴史…

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この記事を書いた人
軽部理人
サンパウロ支局長|中南米担当
専門・関心分野
中南米の全分野、米国政治や外交