第7回不登校、ひきこもりになった息子 母が至った「優しく諦める」の境地

有料記事家族がしんどい?

松本千聖
[PR]

 岩手県北上市に住む後藤誠子さん(56)の次男、匡人さん(30)に変化が起きたのは、高校1年生の夏休みだった。

 一生懸命に勉強して受かった地元の進学校。長男も同じ学校を卒業しており、受験勉強は誠子さんがつきっきりで見ていた。いい高校に行って、大学進学を――。親としての願いでもあった。

 学校は勉強に厳しく、夏休みもほぼ毎日、課外授業があった。だが、あるとき、「具合が悪いから起きられない」と言って、布団から出てこなくなった。匡人さん自身にも理由はわからないようだった。

 「せっかく受かった学校なのに、行かないなんてあり得ない」

 シングルマザーで、長男はすでに家を出ていたので、2人暮らし。なんとか学校に行かせなければと、誠子さんは毎朝、怒りに怒った。2階から自分より体の大きい匡人さんを引きずり下ろして、車に乗せた。今思えば、鬼のようだったと思う。

 誠子さんが怒るのをやめると、学校へ行く日もあった。その後も登校したりしなかったりを繰り返し、ぎりぎりで出席日数を満たして進級し、卒業。卒業後は「ギターを作る職人になる」と言って、上京して専門学校に入学した。

 進路が心配だった誠子さんは、息子がやりたいことを見つけてくれたと喜んだ。だが、翌年、匡人さんから「学校に行っていない」と連絡があった。

やせこけた息子 「私は何もわかっていなかった」

 「学校に行ってよ。自分で見…

この記事は有料記事です。残り1842文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

この記事を書いた人
松本千聖
くらし報道部
専門・関心分野
がん、子どもや女性の健康、子育て
  • commentatorHeader
    中川文如
    (朝日新聞コンテンツ編成本部次長)
    2024年9月28日16時0分 投稿
    【視点】

    2人の子育てにひと区切りつきつつある不肖・私、誠子さんに我が身を重ねました。 「振り返れば、高校の時も、『なぜ行かないのか』と本心を聞いていなかった」 「『子どものために』と思い、頑張ってきた。手放すことは、築き上げてきたものが崩れてい

    …続きを読む