「ハラスメント被害」明記 外国人技能実習生の転籍要件を明確化
多数の失踪者が出ている外国人技能実習生の待遇をめぐり、出入国在留管理庁は、職場の変更(転籍)を認める場合の要件を明確化した。暴行や各種ハラスメント被害、重大な契約違反があった場合は転籍できるとし、技能実習生の人権保護や、労働者としての権利向上を図る狙いがある。1日発表した。
技能実習生は原則として3年間転籍できないが、「やむをえない事情」がある場合には認められると規定してきた。ただ、定義があいまいで、人権侵害があっても転籍しにくいと指摘されてきた。2023年は実習生約51万人のうち過去最多の9753人が失踪。働き始めてから一定期間後に転籍できる「育成就労」制度の2027年までの導入が今年決定したが、なお数年は技能実習制度が続くため、待遇改善が急務となっていた。
今回の見直しで転籍が認められるとして明確化されたのは、セクハラやパワハラなどのハラスメントの被害を受けたり、同僚が被害を受けたりしたケース、雇用契約と実態の乖離(かいり)があり是正されないケースなど。
実習生がこうした事態に直面した場合に訴えやすいように、転籍を申し入れるための専用書類を作成。「長時間の時間外労働をさせられた」「同僚が人権侵害を受け、私も怖い思いをした」など、転籍が認められる具体的なケースにチェックを入れられるようにした。書類は実習先の企業にも置くことを想定している。
1日の記者会見で発表した牧原秀樹法相は「転籍を申し出る方が増え、結果として失踪の防止に資すると考えている」と述べた。