「世界は僕たちが死ぬのを見ていただけ」 だれも止めぬガザ侵攻1年

有料記事イスラエル・パレスチナ問題

ハンユニス=ムハンマド・マンスール 構成・エルサレム=高久潤
【動画】ガザ戦闘開始から1年 現地からマンスール通信員が伝えたいこと
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 パレスチナ自治区ガザでのイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘開始から7日で1年経つが、終わりが見えない。死者4万1千人超――。街が破壊されたガザの人は何を見て、何を感じてきたのか。朝日新聞のムハンマド・マンスール通信員が報告する。

 友人に「見てくれ」と促され、スマートフォンに表示されている動画に目をやった。9月19日のことだ。見たことのある光景があった。パレスチナ自治区ガザ南部ラファ。私が住んでいた街だ。

マンスール通信員が語るガザ

食料不足に加えて、衛生状況も悪化しているガザで、市民たちはどう生きているのか。記事の後半に出てくる、もう一つの動画では、朝日新聞のムハンマド・マンスール通信員が、街を歩き、テントを訪れ、人々の生活を追いました。

 次の瞬間、動画の中で爆発音がして、煙が上がった。

 「ここにあるの、お前の家だろ!」

 友人が泣き出しそうな声で叫んでいる。その通りだった。

 動画はイスラエルの極右グループのテレグラムチャンネルに投稿されていた。イスラエル兵と思われる男の声がした後、建物や地上に仕掛けられた爆弾が爆発した。ヘブライ語で視聴者にこう話していた。

 〈このラファでの爆発をあなたたちに贈ります〉

 隣で心配そうに私の顔をのぞき込む友人の声が、とても遠くに聞こえた。

 私の家が完成したのはこの戦闘が始まる直前だった。借金を背負い、少しずつ建てた家の完成には4年間かかった。

 壁は明るい白を基調にして…

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この記事を書いた人
高久潤
エルサレム支局長
専門・関心分野
グローバリゼーション、民主主義、文化、芸術
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    平尾剛
    (スポーツ教育学者・元ラグビー日本代表)
    2024年10月7日9時11分 投稿
    【視点】

    心がかきむしられて冷静に読むことが難しい記事だった。 フサム・ナイムさんの「みんな、僕たちが死んでいくのを無慈悲に見ていた。誰もこの戦争を止めてくれはしない。伝えたいことも、伝えるべきことも何もない」という言葉に、途方もない後ろめたさを覚

    …続きを読む
  • commentatorHeader
    高橋真樹
    (ノンフィクションライター)
    2024年10月20日20時55分 投稿
    【視点】

    ガザにいる私の友人も、21年のイスラエル軍の攻撃により家族5人で住んでいたマンションごと破壊され、ほとんどの家財を失った。募金や借金などで23年に戸建てを完成させたばかりだったが、今回の攻撃でまた破壊され、すべてを失った。 さらにその後も

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