ピアノを弾くノリ漁師がモデル 映画「ら・かんぱねら」完成

岡田将平
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 ピアノの難曲「ラ・カンパネラ」を独学で習得した佐賀のノリ漁師の夫婦をモデルにした映画「ら・かんぱねら」が完成した。有明海のノリ漁の情景を交えながら、家族のきずなを描くホームドラマだ。

 映画のモデルは、佐賀市のノリ漁師、徳永義昭さん。徳永さんは、ピアニストの故フジコ・ヘミングさんの演奏に心を打たれ、52歳だった12年ほど前から猛練習し、難曲を弾けるようになった。

 主演は伊原剛志さん。時折ぶつかりながらも夫を見守る妻の役を南果歩さんが演じた。楽譜も読めない初心者が、周囲から反対されながらもピアノに向き合い、難曲に挑戦する姿をユーモアを織り交ぜて描き、妻や息子ら家族との物語も展開する。

 17日、佐賀市文化会館で試写会があり、出演者や徳永さん夫婦が、舞台あいさつや報道陣の取材で、映画への思いなどを語った。

 劇中で流れる主人公の演奏は、伊原さん自身によるもの。徳永さんと同様、初心者だったという伊原さんは撮影に入る前から一日も欠かさず、時には折りたたみの電子ピアノを持ち運んで練習し、5カ月半かけて習得したという。

 伊原さんは「より徳永さんがすごいと思ったし、役に近付けたんじゃないかなと思った」と話した。クライマックスでは「ラ・カンパネラ」を1曲通して演奏する。

 どうしても「ラ・カンパネラ」を弾きたいと挑んだ徳永さん。作中では「夢」も重要な言葉として出てくる。南さんは「大人も子どもも、いくつになっても夢を見ることって本当に大事だなとこの映画を通して感じた」と振り返った。

 ロケは今年3~4月に、全編佐賀で行われ、佐賀の名所も登場する。種付けや収穫といったノリ漁の様子やノリで巻いたおにぎりなども随所で映し出される。

 鈴木一美監督は徳永さんを通して、ノリがどうやってできるかを学んだという。農業のように「ノリ畑」で養殖することから、加工する町工場まで幅広いノリの仕事。「かなりの知性と労働力と根気がないとできない仕事」と評する。映画上映を通し、佐賀のノリの売り上げが増えることも期待しているという。

 ノリ漁期のさなか、試写会には徳永さん夫婦も駆けつけた。

 この映画は「映画『ら・かんぱねら』を支援する会」を中心に多くの人の協力で完成に至った。あいさつでは、徳永さんが支援に感謝し、言葉を詰まらせる場面もあった。

 徳永さんは試写会後、「俺の映画じゃなかな、みんなで作り上げた映画だなと思い、感謝以外の言葉がないと思った」と語った。

 妻の千恵子さんは「夢見ているような感じで、一生分のラッキーを今日もらったような気がして、幸せです」と話していた。

 来年1月31日に佐賀市のイオンシネマ佐賀大和で先行ロードショーが始まる。2月21日からは福岡、熊本で、3月には広島、5月には東京の映画館で上映が始まることも決まっている。

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この記事を書いた人
岡田将平
佐賀総局
専門・関心分野
平和、戦争体験の記録・継承、地方