子どもの権利を大切にしない日本 きょうは「世界子どもの日」

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平井恵美 松本千聖
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 11月20日は「世界子どもの日」。今年は日本が子どもの権利条約を批准してから30年の節目だ。子どもの人権を守る取り組みは道半ばで、虐待や貧困、自殺など世界の子どもたちが直面する課題は多い。子どもたちのために、私たちに何ができるだろうか。

「無意識に相手を傷つけていたかも」

 「卒業後、社会の中で生きるうえで色々な壁がある。自分も相手も納得する解決策を見いだすには何が大切かな」

 10月末、山梨県笛吹市の県立笛吹高校で行われた「子どもの権利」を学ぶ授業。公益社団法人「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」の職員で、進行役を務めた松山晶さん(39)が総合学科に通う1年生約80人にこう問いかけた。

 子どもの権利の啓発に取り組む同法人と学校が連携し、今年度から授業を実施。同校研究開発主任の木下花子教諭は「人権は難しいものではなく、普段の生活の中で守られたり、行使されたりするものなんだと身近に感じてほしい」。

 この日、生徒らは文化祭をめぐる架空の話を読んで自分と異なる意見が出たり、自分の権利と他人の権利とがぶつかったりした時、子どもの権利の視点からどう行動すればよいのか話し合った。松山さんは「人生、学校生活や仕事などで迷った時の道しるべになるのが人権だと考えてください」と呼びかけた。

 授業を受けた若林翼姫(つばき)さん(15)は「誰もが意見を尊重される権利があるということを理解し、自分とは違う反対意見も大切に扱うべきだと思った」。荻原直之さん(15)は「友だちとふざけ合う中で無意識に相手を傷つけていたかもしれないと考えるきっかけになった」と話した。

守られていない「子どもの権利」

 こどもの基本的人権を国際的に保障するため、1989年11月20日、「子どもの権利条約」が国連で採択された。日本は94年に批准したものの、日本社会における条約の認知度は低く、子どもの権利への理解も広まっていないのが現状だ。

 こども家庭庁が2023年に…

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この記事を書いた人
松本千聖
くらし報道部
専門・関心分野
がん、子どもや女性の健康、子育て
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    本田由紀
    (東京大学大学院教育学研究科教授)
    2024年11月20日7時47分 投稿
    【視点】

    この記事は「子どもの権利」について日本が非常に遅れている現状を描いている。試みに、記事中の「子どもの」という部分をすべて「人間の」に置き換えて読んでみていただきたい。子どもの権利を軽視するということは、人間全般の権利を軽視することに容易につ

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    井本直歩子
    (元競泳五輪代表・途上国教育専門家)
    2024年11月20日9時11分 投稿
    【視点】

    元ユニセフ職員の私が、離職して今一番力を入れて活動しているのが気候変動問題です。子どもの権利の中で、すべての大人が最も真剣に考えなければならないことの一つが気候変動による将来世代の生存の権利だと思っています。産業革命以降の気温上昇が1.5℃

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