福島のロッコク沿いホームムービー募集 震災前の「食の風景」映画に

酒本友紀子
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 福島県の沿岸部を南北に走る国道6号(通称・ロッコク)沿いが舞台のドキュメンタリー映画「ロッコク・キッチン」が制作進行中だ。原発事故の影響が残る場所で、住民の暮らしや思い出を記録しており、制作陣は映画で紹介する事故前のホームムービーの提供を呼びかけている。

 長野県安曇野市在住の映画監督三好大輔さん(52)は2023年末からロッコク沿いの地域に通い、撮影を続ける。ノンフィクション作家の川内有緒さん(52)とロッコク沿いを旅しながら、「食」を切り口に人々のいまの暮らしを読み解き、記録映像と随想をまとめる企画の一環だ。

 「僕らは懐かしめないんですよね」。カメラを向けたある若い男性の話が心に残った。建物が解体され、子どものころに見た景色がどんどん変わっていく。「上書き」されていくまちの様子を三好さんも目の当たりにしてきた。

 「現在進行形のロッコク沿いの姿だけではなく、当たり前の『食の風景』が当たり前じゃなくなってしまった事実とも向き合いたい」。そう考えるようになった。

 三好さんは普段、家庭に眠る8ミリフィルムを集めて映画をつくる。その手法を生かし、震災前の住民らの食にまつわるホームムービーを映画に盛り込むことにした。しかし、原発事故の避難時に家から映像メディアを持ち出せず、家の解体と同時に廃棄した住民もおり、思うように集まっていないという。

 制作陣は12月9日までメールや郵送で映像を受け付けている。対象は、震災前に富岡、大熊、双葉、浪江各町や南相馬市で撮影された映像。食卓やキッチンのほか、餅つきや漁港の水揚げ、田植え、祭りといった場面も含む。8ミリフィルム以外にもDVDやVHSなどのメディア、ガラケーに残された動画も可能だ。映画に採用された映像はデジタルデータ化したものを無償でもらえる。

 同14日には午前11時~午後5時に道の駅なみえ大会議室で、映像受け付けイベントがある。再生機材が用意されており、その場で映像を確認できる。三好さんや川内さんも参加し、三好さんが手がけた映画「よみがえる浪江町」を上映する。

 1月25日には午後4~7時に南相馬市の「おれたちの伝承館」で、集まったホームムービーの上映イベントがある。映画「ロッコク・キッチン」は来年中の劇場公開を目指している。

 問い合わせは事務局のメール(rokkokukitchen@gmail.comメールする)。

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