人口200倍の客集まる世界的「映えスポット」美瑛町長が語る共栄策
毎年、人口の200倍もの観光客が訪れる北海道美瑛町。畑や樹木が織りなす「パッチワークの風景」が国内外の人々を魅了する。1万人に満たない町はオーバーツーリズム(観光公害)に戸惑いつつ、農業と観光の両立をめざす。悩んだ末に全国でも珍しい観光振興のための駐車場利用税の導入を決めた角和浩幸町長(57)に、その経緯と狙いを聞いた。
かくわ・ひろゆき 1967年、横浜市生まれ。同志社大法学部政治学科を卒業後、京都新聞社に入社。2005年に北海道に移住し、美瑛町で2年の研修期間を経て農家に。07年から11年まで北海道新聞美瑛通信員をつとめた。19年から現職。自らの農園は「ファーム雨読舎」。著書に「美瑛の丘で百姓修行」。
北海道のほぼ中央に位置する美瑛町は、小麦やてんさい、ばれいしょの主要な生産地で、なだらかな波状の丘陵が多い。
1980年代には風景写真家の前田真三氏が多彩な農業景観の写真を撮影。映画やテレビコマーシャル、企業広告などで使われ、「景観の美しい町」として全国で知られるようになった。
角和さんによると、バブル崩壊後に減っていた観光客が再び増えたのは、「『白金青い池』の風景が、2012年に米アップル社のパソコンの壁紙にたまたま採用されたのがきっかけだった」
「青い池」は1988年に噴火した十勝岳の泥流対策で国がつくった堰堤(えんてい)の背後に、美瑛川の水が滞留してできた。温泉で湧出(ゆうしゅつ)するアルミニウムを含む水が河川水と混じることで、神秘的な青色になる。知る人ぞ知る名所は、アップル効果で世界的な「映えスポット」になった。
インバウンド(訪日外国人客)を中心に年間の観光客が200万人を超え、町は観光公害に悩まされるようになる。マイカーや大型観光バスが交通渋滞を引き起こし、畑に入り込んで写真を撮る観光客も。「最近は、昼食をとれる飲食店がなくて困っているという町民が増えた」
■外国人に対する排他的な感情…