12月8日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は佐佐木幸綱さん、高野公彦さん、永田和宏さん、馬場あき子さんです。☆は共選作です。
佐佐木幸綱選
読みかへす「朝日歌壇」の反戦歌四半世紀に半減したり(加東市)藤原 明
水揚げの蟹(かに)の活気の輪島港子を負う母も混じり蟹選る(羽咋市)北野みや子
明王の忿怒(ふんぬ)の目線を凝視する東寺はギロリ輪王寺はふわり(津市)海住 秀子
一枚づつ君子蘭(くんしらん)の葉拭きやりてリビングに入れる明日は立冬(町田市)村田 知子
☆ヤマバトがここで食われて花びらのように羽散るポプラの並木(オランダ)宮沢 洋子
紅白は空しき祭典何もかもローマ字カタカナ飛び跳ねまわる(福生市)橋本 武敏
駅までのバス一時間一便に過疎化止まらぬ山の辺に住む(茅ケ崎市)藤原 安美
ハクチョウの鳴きわたる声ちかづきて庄内平野は初冬の光(仙台市)沼沢 修
半年で本の貸し出し五十回賢治に挟む褒美の栞(相模原市)宮崎 清美
マッチ擦る練習の孫明日ある「むかしのくらし」の授業のために(観音寺市)篠原 俊則
【評】第一首、二〇〇〇年代に入って、投稿歌に反戦歌は激減したように思う。時代の流れ、短歌の状況があらためて想起される。第二首、「蟹の活気の輪島港」という表現に注目。蟹の朱色であふれている市場の風景が目に浮かぶ。
高野公彦選
☆十六歳の吾子の棺に忍ばせし…