ドン・ファン邸で「あの日」何が起きたか 莫大な遺産と月100万円

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伊藤秀樹 河原田慎一
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殺人罪に問われた元妻 12日判決

 「ちゃんと証拠を見て判断していただきたいです」

 11月18日、和歌山地裁。黒のワンピース姿の被告は、2カ月ほど前の初公判の時よりも落ち着いた口調だった。

 この言葉を最後に、22回にわたって開かれた裁判員裁判が結審した。

 2018年5月24日。「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家、野崎幸助さん(当時77)が、和歌山県田辺市の自宅2階で亡くなっているのが見つかった。死因は、急性覚醒剤中毒。

 倒れていた野崎さんを見つけて119番通報したのは、3カ月ほど前に結婚したばかりの須藤早貴被告(28)だった。

 裁判の争点は、シンプルだ。

 野崎さんは、殺害されたのか。

 殺害されたのだとすれば、犯人は、須藤被告なのか。

 ピンク色の塀に囲まれた野崎さんの自宅で、あの日、起きたこととは。被告人質問でのやりとりや検察側の主張などからたどる。

 野崎さん宅には当時、住み込みで家事を手伝う女性がいた。この女性が午後3時すぎに外出して以降、野崎さんと須藤被告は自宅で2人きりだった。

 夕飯を終え、野崎さんは2階の寝室へ。午後8時すぎ、住み込みの女性が戻り、須藤被告と一緒に1階でテレビを見ていたという。

 午後8時半ごろ。2階でドンドンという物音がした。

 「社長(野崎さん)、呼んでいるんじゃない? 上に行った方がいいよ」

 女性の供述調書によると、須藤被告に促したが、被告は2階に上がらなかった。

「社長が変なんだけど」

 ただ、ここは少し主張が食い違う。

 検察側は、「(女性が)何度…

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この記事を書いた人
伊藤秀樹
和歌山総局|事件担当
専門・関心分野
行政、スポーツ、災害、孤独