リニア先進坑掘削を来月以降再開へ JR東海、静岡県専門部会に表明

青山祥子 斉藤智子
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 リニア中央新幹線の山梨工区で、山梨県側から静岡県境に向けた掘削が中断している「先進坑」について、JR東海は17日、早ければ来年1月にも掘削を再開する計画を明らかにした。地質構造や水資源の有識者で構成する静岡県専門部会で説明し、了承を得た。

 JR東海は今月6日、山梨県側から掘り進めて静岡県内に入っていた「高速長尺先進ボーリング」の中断を発表した。トンネル工事に先立ち、小さな穴を掘って地質や地下水の状況を調べるのが目的だが、山梨県内の地質のもろい部分で穴詰まりが起きて続けられなくなっていた。

 部会では、ボーリング中断に至る経緯が事前に共有されなかったことなどについて、委員や県側から苦言が相次いだ。

 ボーリングについてJR東海は、静岡県境まで478メートルの地点まで掘っている「先進坑」と呼ばれる幅約7メートルのトンネルを掘り進めた後、再開する方針だ。先進坑は、リニアが走るトンネルの「本坑」と並行に掘り、本坑を掘る前に地質や湧水(ゆうすい)の状況を調査するもので、営業開始後は避難路や保守作業用通路にもなる。

 専門部会では、先進坑が県境まで300メートル以内に達する前に、リスク管理などについて専門部会で協議し、県に合意を得ることを確認した。

 ボーリングのデータ共有の遅れが地質状況の把握の精度を下げた可能性があるとの指摘も出た。先進坑を掘削した後のボーリングで、改めて詳細に調査することもJR東海に求めた。

 森貴志副知事は「適宜適切な情報をこちらにいただいていなかったのではないか。速やかな情報交換を行っていただきたい」と求めた。JR東海の永長隆昭・中央新幹線静岡工事事務所長は「大井川利水関係協議会の皆様にも説明させていただきたい。県境から300メートル以内に入る前に、静岡県、山梨県とコンセンサスをとって先進坑の掘削を進めていきたい」と述べた。

 また、トンネル工事で発生する残土置き場の主な候補地「ツバクロ発生土置き場」については、直下に断層が存在するものの、活断層ではないとの報告が委員からあった。断層がある可能性をJR東海が9月に初めて明らかにし、11月6日に専門部会の委員も参加して現地で調査をしていた。

 その結果、発生土を置くことに問題はないと了承された。今後、設計やモニタリングなどの検討を進めるという。

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