酒どころの酒造組合に数十年ぶりの新参者 寒風山に抱かれた酒造所
亀岡龍太
高知県いの町の街中に本社を置く川澤(かわざわ)酒造が今年、愛媛県境に近い山中に酒造場を構え、日本酒造りを始めた。社長と杜氏(とうじ)の二足のわらじをはく川澤亨さん(58)が自前の銘柄「山に雲が」を生みだし、酒の奥深さを追い求める新たな旅に出た。
いの町の中心部から国道194号を仁淀川沿いに走ると、分水嶺(ぶんすいれい)を越えて四国三郎、吉野川の上流域に入る。同町桑瀬の酒造場は、愛媛県西条市と結ぶ四国最長の寒風山トンネル(約5.4キロ、標高710メートル)の高知側の入り口にあった。寒風山(標高1763メートル)が背後にそびえる。
酒造りの区画は、巨大な倉庫のような屋内にある。衛生管理を厳重にするためほぼ密閉され、部外者は立ち入れない。川澤さんはここで連日、仕込み作業を続ける。
お酒の名前は「山が鳴る」音
土佐市生まれ。東京農業大学…