バラバラのバナナはバナナ? 謎めく思い込みと常識の間の絶妙な加減
言葉季評 歌人 穂村弘さん
先日、新聞の短歌欄でこんな作品に出会った。
秋晴れに父の科白を思い出す「コタツは文化の日に出すんや」と
田畑秀樹「日経歌壇」
へえ、と思った。これは「父」個人の意見なのか。それとも、自分が知らないだけで、広い範囲で共有されたルールなのだろうか。ネットで検索してみたところ、一般に「炉開き」由来の「こたつ開き」は亥(い)の月の最初の亥の日とされているらしい。これは時期的には「文化の日」に近く、つまり「父」の言葉はまったく個人的な考えというわけではないことがわかった。
もしも、この歌が次のようだったらどうだろう。
冬晴れに父の科白(せりふ)を思い出す「おせちは正月に食うんや」と 改悪例
これでは短歌として成立しな…
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