「最北の秘境駅」から「ばっかい」の駅名標撤去 再設置を望む声も
「最北の秘境駅」で知られる北海道稚内市のJR宗谷線抜海駅から、「ばっかい」と書かれたホーロー製の駅名標4枚がすべて消えた。JR北海道が盗難を免れるため、今年3月の廃駅前に段階的に取り外したという。地元や鉄道ファンらは再設置を願っている。
駅名標は4枚とも縦約80センチ、横約20センチで紺地に白字で「ばっかい」と書かれていた。3枚は駅名標の下に「本場の味 サッポロビール」のホーロー製広告(縦横約20センチ)があり、もう1枚はJR社員の手作り。ホーム側の駅舎の両端、待合室と保線員事務所の窓枠の柱に設置されていた。
JR北・旭川支社の説明だと、各地の無人駅で駅名標の盗難被害があり、2021年に「看板保護」のため、支社管内の無人駅の看板の一部取り外しを実施。抜海駅は同年6月9日に2枚を撤去。さらに24年8月に隣の勇知駅で駅名標が盗まれたため、翌月に残りの2枚を取り外したという。
現在、ホーム側に残っているのは、改札口横に設置された、砕いた貝殻で黒い板に「抜海駅」の文字をかたどった縦型の駅名板、もう1枚は改札口上にある青地に白字で駅名が書かれた横型の駅名板の2枚だけだ。
いずれも近隣住民から寄贈されたもので、特に貝殻の駅名板は小泉今日子初主演の連続テレビドラマ「少女に何が起ったか」(1985年放送)にも映っている。40年以上前に地元の子どもたちによって作られたものらしく、いまでは駅のシンボルになっている。ただ、風化などで貝殻も落ち、「海」と「駅」の文字は読みづらくなった。
存廃問題で揺れた抜海駅は昨年12月のダイヤ改定発表で今年3月14日の乗降を最後に、100年余の歴史に終止符を打つことが明らかになった。高倉健や吉永小百合主演の映画のロケ地としても知られ、鉄道ファンだけでなく車やバイク、自転車で訪れる旅行者にも愛されたが、「駅」としてあり続けられるのもあと2カ月余になった。
駅のホームには監視カメラが設置されていることから、地元住民や鉄道ファンからは「サッポロビールの広告付きのホーロー駅名標は北海道の駅の象徴。一枚もないのはあまりに寂しい」「駅名標を元に戻して本来の抜海駅らしい姿で最後を迎えさせてほしい」とJRに再設置を望む声が出ている。
今春のダイヤ改定では、ほかに宗谷線の南幌延、雄信内(おのっぷない)(ともに幌延町)、「日本最東端」の花咲線東根室(根室市)、根室線の東滝川(滝川市)が廃駅になる。
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