木村一基九段が今期順位戦初勝利「立て直し方は分からないけれど」
磨き上げた個性を表現し、歩んできた棋士人生を投影したような勝局だった。
将棋の木村一基九段(50)が21日、東京都渋谷区の将棋会館で指された第82期名人戦・B級1組順位戦(朝日新聞社、毎日新聞社主催)で羽生善治九段(53)との激戦を158手で制し、今期順位戦の初勝利(8敗)を挙げた。
23歳という遅いデビューながら、2019年の王位戦で史上最年長の46歳で初タイトルを獲得した木村は、順位戦でも最上位のA級在位通算5期を誇る。
B級2組からB級1組に再昇級した今期はA級復帰を期待される中でリーグ開幕を迎えたが、6月の1回戦から勝利を手にすることができずにいた。
開幕8連敗を喫し、前局でB級2組への降級が確定。希望を抱くことの難しい状況の中、残る4戦に臨まなくてはならなくなったが、羽生を相手に戦った本局は「千駄ケ谷の受け師」の異名を持つ木村らしい一局になった。
戦型は相懸かり。盤上の四方に争点が生まれる難解な進行になった。形勢判断の難しい展開が終盤まで続いたが、午後11時を過ぎて、互いに持ち時間が切迫してから「受け師」が本領を発揮する時間帯になった。秒読みに追われながら、駒を持つ指先は自陣へ、自陣へと伸びていく。
羽生は妙技を尽くした手順で攻め駒の活用に成功し、2枚角で後手玉を狙った局面、木村の決断は控室が全く検討していなかった△4一銀(図)だった。徹底抗戦に活路を求めた後手に対し、最後は攻撃の手を止めざるを得なかった羽生が午後11時49分、投了に追い込まれた。
深夜0時半、感想戦を終えた木村に話を聞いた。
「今日もちょっと分からなか…